1988
俺たちは揃って【浮き玉】と【小玉】に乗って部屋の窓から飛び立ったが、部屋にいた時の恰好で手ぶらのままだ。
雨や気温に関しては俺の【風の衣】があるし、フィオーラの魔法だってあるから困ることはないんだが……明かりすら使わずに飛んで行くんだろうか?
そもそも街を見て回ると言ってはいるが、フィオーラが何をしたいのかもよくわからない。
とりあえず、すぐ隣を飛んでいるフィオーラに「照明はいらないの?」と訊ねた。
【祈り】は発動しているから淡く光ってはいるものの、周囲を照らせるほどの光量はないし、ジッと上を見なければ俺たちがいることに気付けないだろう。
「危なくない?」
「暗い方が見やすいのよね。……地上に降りる時は使うけれど、今はこのままでいいわ」
「そうなんだ?」
「ええ。……あっちよ」
いまいちよくわからないフィオーラの返答に首を傾げていると、彼女は俺の肩に手を置いて街の東側を指した。
東門じゃなくて、丁度冒険者ギルドがある辺りだな?
俺は「はいはい」と返事をすると、フィオーラに合わせて進路を東に向ける。
「……んでさ、何を見に行くの? 魔物が寄ってきていないかとか、結界とか水路を見に行くとは言ってたけど、それはフィオさんがやる仕事じゃないでしょう?」
結界そのものはフィオーラの管轄かもしれないが、街の設備管理の仕事は騎士団の役割だ。
フィオーラが雨が降る夜間にわざわざ飛んで見に行くようなことなんだろうか?
「あら? そうでもないわよ? 到着したら教えてあげるわ」
「ふぬ……了解」
まぁ……到着したら教えてくれるのなら、ここでこれ以上聞かなくてもいいか。
質問を止めると、俺たちは街の様子を眺めながら東に飛んで行った。
◇
冒険者ギルドのすぐ上空までやって来ると、降りる場所を探して地上の様子を見ることにした。
貴族街はともかく、ここに来るまでは建物内は明かりがあったが、路地には警備や巡回の兵を除けば出歩いている者はいなかった。
雨が降っている上に普段から夜間は出歩く者は少ないし、当然といえば当然なんだが。
「この辺は夜でも警備以外の人がいるね。降りるならあの辺かな?」
普段に比べると流石に少ないが、冒険者ギルドは入り口前の警備の兵以外にも人の出入りがあった。
いつもなら入り口前に降りるんだが、今そこに降りると何事かと驚かせてしまうだろう。
少し離れた馬車を停めているスペースなら人がいないし丁度良さそうだ。
俺はそこを指して向かおうとしたんだが、フィオーラが肩に手を置いて「待ちなさい」と止めてきた。
「近くを見て回るから、先に挨拶をしておきましょう。扉の前でいいわよ」
「む……了解」
そう返事をして、俺は入り口の前に向かって降りていく。
「おつかれさまー!」
頭上から降ってきた声に、入り口前でたむろしていた冒険者たちが一瞬驚いたような反応を見せたが、すぐに俺だと気づいたらしい。
笑いながら声をかけてきた。
「よう! どうしたこんな時間に」
「アンタ確か朝から任務に出てただろう? こんな時間まで仕事なのか?」
「いや、ちょっとコッチに用事があって……」
フィオーラと一緒に来た……と言い終える前に、別の冒険者が口を開いた。
「なんだ、一人で夜遊びでもしてんのかと思ったぜ」
「姫さんは意外と仕事をしているからな」
そう言って笑っている。
昼間と違って、夜は結構砕けた連中が多い気がするな。
「雨季明け前に体の鈍りを落とそうとしてるのか、最近ダンジョンは大手の連中がこんな時間まで狩りをしているんだ。中々俺たちが狩れる場所がなくてな……アンタの仕事に人手が必要なら手伝うぜ」
「何をするのかは知らないが一人よりはマシだろう?」
その彼らの言葉に、他の冒険者たちも頷いている。
ありがたいことではあるんだが……。
「ごめんなさいね。私も一緒なのよ」
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




