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「ふっ!」
アカメの目と【妖精の瞳】を発動し、森の方を見てみるが……わからん!
戦闘を行いながらもその笛の音は聞こえた様で、周りは浮足立っている。
その場で足を止めている者が多い。
魔物が戦い方を変えてきたタイミングだし、ちょっとまずいかも。
森から距離があるし、ジグハルトにぶっ放してもらうべきか……?
「落ち着け!俺が当たる。問題無い!」
と、アレクの声が響いた。
そんなに大きい声でもないのによく届くし、それを聞き何か落ち着いた……。
「あ……【猛き角笛】か……」
「魔物の数は残りわずかだ!押し切るぞ!」
次いで、騎乗し戦場を横断するようにしながらのオーギュストの声も響いた。
さっきのアレクの檄と同じ感じがするが、もしかしたら彼も持っているんだろうか?
王都の訓練場で使った時はよくわからなかったが、こう作用すんのか……。
周りを見ると同じく冷静になったようで、また魔物との戦いを再開している。
なにはともあれ、立て直しに成功した様だ。
それなら俺はどうするか……アレクの援護に回るかな?
◇
「アレーク!」
「セラか⁉」
森の方に向かって走るアレクとその一行を発見し並走するように高度を落とした。
一緒にいるメンバーは冒険者ギルドで何度か見た事のある面子だが、装備を見るに全員どうも近接主体の様だ。
こいつら……これでやる気なのか?
マジかよ……という思いを隠せないが、まぁ、何か切り札の様な物があるのかもしれないな。
「上から様子を探ってくれ。方角はわかるが距離まではわからない。俺達で止めたいが、出来れば森の外で迎え撃ちたいんだ」
「了解!」
アレクの指示を受け一気に高度を上げた。
さっきまでも一応森の警戒は怠ってはいなかったが、距離があり過ぎると集中しないと今一上手くいかず、ボスの姿を捉える事が出来なかった。
今なら近づいているし方角もわかる。
さぁ!どこだっ⁉
……いたわ。
「アレクっ下がって!南からだ!」
森の中で多分500メートル位まだ距離があるが、正面やや南寄りからこちらに向かって、木をなぎ倒しながら突進してきている。
地上目線だと木に遮られてわからなかったが、上からだとその様子は一目でわかった。
……デカい。
そして速い!
木をなぎ倒す音とともにそれが近づいてくる。
全く足を緩める気配が無くこのままぶつかると、単純に質量差で吹き飛ばされかねない。
俺は逃げるぞ?
「位置とデカさはっ!」
「もう森を抜ける!後クソデカい!」
それを聞き、アレク達は足を止めた。
「ここで止める!行くぞっ!」
逃げずに迎え撃つつもりなのか、アレクを先頭に各々構えを取り声を上げ気合を入れている。
覚悟は決まっている様だ。
俺は決まっていないが、残念ながら待ってくれない様で森の端の木が吹き飛び、クマさんが姿を現した。
◇
俺が今まで見た中で一番大きな魔物は王都のダンジョンで見たウシの魔物。
軽トラ位のサイズで、アレは大きかった……。
このクマは……大型バスくらいかな?
観光用のあの大きなバス。
「来るぞっ!」
一直線にこちらに向かってくるクマを見て声を上げるアレク。
盾を背中に背負って、魔人の棍棒を両手で構えている。
【妖精の瞳】で見ると、割合は緑が多いが赤も見える。
この色合いは魔物だ。
そして、その巨体に見合う強さ。
ただし、魔王種ではなくただの魔物。
「こんなのがいるのか……」
やる気になっている脳筋達にあてられたのか、ついつい俺もクマの後方に回り込んでしまったが、これどうすりゃいいんだ……?
【影の剣】じゃ多分刃が短くてダメージは与えられない。
根元まで刺したり、ザクザク切り刻んだり、頭部やいっそ正面に回って心臓を狙えればともかく、これ相手にそんなことできるセンスは俺には無い。
寒いからって【緋蜂の針】を外してタイツとブーツを履いてきたのは失敗だったかもしれない。
ポーションの運搬に備えて傘も置いてきたから目潰しも出来ないし……。
「ほっ!」
とりあえず【祈り】のかけ直しをしたけれど、……どうしよう。
俺強い相手には弱いんだぞ?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




