1939
「魔法を撃ちます。離れなさい!」
テレサは周囲の兵に向かって指示を出すと、魔物の群れに向かって魔法を立て続けに放った。
直撃しても一撃で倒せるほどの威力はないが、足止めと牽制にはそれでも十分だ。
「このまま下がって門前の兵たちと合流します。立て直しますよ」
そう言ってテレサは馬を返そうとしたが、彼女たちの方に向かって飛んで来ている俺に気付いたようだ。
俺が彼女たちの奥にいる魔物たちを指すと、意図が伝わったようで頷いている。
「後退は中止です! この場で踏み止まりますよ!」
急な指示の変更に周囲の兵は一瞬何事かと辺りを見回したが、俺が飛んできていることに気付くと、テレサ同様にすぐに理解したようで、彼女の指示に合わせて動き出した。
テレサとその護衛役と、人数は少ないが横に広く隊列を変えている。
彼女たちだけで魔物を南門正面の兵たちのように受け止めることは無理だろうが……。
「お待たせ! 適当にダメージを与えてくるから、止めはお願い!」
俺と連携を取ったら十分可能だ。
彼女たちを追い抜く際に簡潔にそう伝えると、一気に前方の魔物たちに向かって突っ込んでいく。
そして、接近しながら魔物たちの様子を観察する。
「オーガオーガコボルトコボルト……全部で六体か。オーガがいるのはちょっと珍しいけど、ありがちではあるね」
一の森の魔物だけあって先程追い払ってきた魔物たちとは強さが段違いだ。
一撃が強力なオーガがいることだし、俺一人で戦うのなら少しは慎重になる必要がある相手だが。
「よいしょっ!」
右足を前に突き出すと、無造作に魔物たちの真ん中に突っ込んでいく。
コボルトたちは慌てて距離をとるが、二体のオーガはその場で構えて蹴りを受け止めるつもりらしい。
ダンジョンや他所のオーガでも【緋蜂の針】の一撃に耐えるし、一の森のオーガならそれくらい余裕だろう。
だが、倒すことは出来なくてもダメージは与えられるし、体勢を崩すことも出来る。
蹴りを食らった一体は、転倒こそ免れたが後ろに何歩かよろめいたかと思うと、尻もちをついた。
まだまだ死ぬには程遠いダメージだが、足止めにはなっただろう。
「それじゃー……次だ!」
もう一体のオーガに斬りかかりつつ、俺は尻尾を発動して最大サイズで振り回した。
距離をとったコボルトたちと、ついでに転倒したオーガも殴りつける。
コイツらは一先ずこれで良し。
目の前のオーガ一体に集中出来る状況を作ったことで、改めて体中を浅く斬りつけていく。
一の森のオーガとは言え、【影の剣】なら急所に当てさえしたら一撃で倒せるが、不意打ちじゃなく真正面からだと俺の腕じゃちょっと難しい。
普段だったら一旦距離をとって上手く隙を探すんだが……今は俺一人じゃない。
「かかりなさい!」
テレサの声が背後から響いたかと思うと、魔法がコボルトたちに飛んで行き、さらに兵たちが突撃していく。
目の前のオーガは、俺の攻撃は大したことないし無視していいとでも思ったのか、兵たちに襲い掛かられている仲間たちの方を振り返った。
仲間たちの救援に走ろうとしているのか、オーガは前傾姿勢になっていて首は狙えないが、ガラ空きの背中に俺は即座に【影の剣】を突き立てる。
まだ息はあるようだが、一気に体を覆う光が小さくなっていた。
かなりいいダメージがあったようだな。
「それなら……ほっ!」
俺はようやく起き上がったもう一体のオーガに、再び右足を前に突っ込んで行く。
先程の一撃を受けて警戒しているのか、膝立ちで腕を前にガードの構えをとっているが。
「はぁっ!!」
今度は蹴りじゃなくて【影の剣】だ。
スパッと両腕を斬り飛ばすと、今度こそ空いた顔面に蹴りをお見舞いした。
このまま止めを刺せなくもないが。
「テレサ! オレは向こうに行くから残りをお願い!」
門前もゴチャゴチャしているし、アッチの援護に向かった方がいいだろう。
俺はテレサの返事を待たずに、門前に飛んで行った。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




