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雨季明けに雨から避難していた魔物が戻って来て、それを追って大物もやって来る。
それ自体はよくある事でアレクを始め冒険者や兵士も警戒していた。
ただ、数年に1度くらいの頻度で、その逃げてきた魔物達が集団化する事がある。
さらに追って来た大物がボスの座に収まる事で、大森林から出て、人の街を襲って来る事があるらしい。
もちろんこの街だけでなく、周辺の開拓村等も含まれる。
5年程前にもあったらしいが、少しそのスパンが短いが、ただの偶然だろうと支部長は言っている。
しかし5年前か……。
俺も治療の手伝いに駆り出されたが、あれがそうだったのかもしれないな。
今回のこれもボスがいる集団だそうだ。
俺は見つける事は出来なかったが、セリアーナが見つけた。
ちなみに把握できている数だけで100体以上だとか……。
その為対処をする必要があるのだが……中々厳しいようだ。
「これ以上は割けないな……」
「南はルバン卿がいるだろう?なら浮いたその分を北に回せばいい」
「北は堀が完成しているから多少の事ならば耐えられるはずだ。それよりも奥の村をどうするかだ」
第1会議室は10人掛けの長机が3台置かれている。
その2台は既に埋まり、さらに席の無い者も集まって、伝令を随時飛ばしながらあーでもないこーでもないと、時折こちらにチラチラ視線を寄こしながら激論を交わしている。
魔物を倒し追っ払い、この街だけ守ればいいというわけでは無い事が、彼等を悩ませているんだろう。
いくつか作戦を立てているが決め手に欠く様で、なかなか思い切れないようだ。
話に出ているように拠点として機能している南北の村に、さらに他にもいくつか点在する開拓村。
そこに被害が出る事は避けなければならない。
なまじ発展して価値が出た事で捨てるわけにもいかなくなってしまった。
その為そちらにも人数を割く必要があり、冒険者も兵士も増えたとは言え分散されてしまう事で果たして手が足りるかどうか。
そんな状況をひっくり返せそうな人間が2人いる。
ジグハルトとフィオーラだ。
彼等は2人をあてにしたいが、二つ名持ちで尚且つセリアーナ側の人間という事で言い出せないんだろう。
仕方が無いな……!
「ねー。ジグさんとフィオさんがオリャーって本気出したら全部倒せるんじゃないの?」
皆にも聞こえるように少し大きめの声でジグハルトに訊ねてみたが、狙い通り効果はあったようで、彼等も議論を止め奥の席にいる俺達の方を向いた。
「倒すだけならいけるとは思うな」
おおっと声が上がったが、まだ続きがあるようでジグハルトは手を振り黙らせた。
「通常の獣や魔物なら問題無いが、魔境となると使う魔法の種類を選ぶ必要がある。倒すとなると……火だな」
そーいや前調査に同行した時に魔物を消し炭にしていた。
あんな感じか。
「それじゃ駄目なん?」
「冬で乾燥しているし風もあるからな。俺の火力じゃ簡単に火が点くし、そうしたら魔物を倒しても今度は森林火災だ」
……開拓どころじゃ無くなるな。
「森から離して街の近くまで引き付けたりは?」
「街の近くだとどうしても川や水路があるからな。少数ならともかく多数を相手取るのに位置を気を付けながらとなると俺でも厳しいな」
「あー……」
街の西には農場地帯があり、そこで作られる作物はこの街だけでなく東部一帯に運ばれている。
麦はもう刈り入れしているが、今も何か野菜を育てていたし、水路が壊れるとそこにも被害が出てしまう。
……なるほど。
そりゃ迂闊に暴れられないか。
理解したのかこちらを見ている騎士達が渋い顔をしている。
「やるとしたら適当な足場を作って、そこから全体の支援や抜けようとする魔物の牽制だな」
そう言う事らしいぞ?
騎士諸君。
「説明御苦労、ジグハルト。残念だが彼を主攻に据えるのは無理な様だ。時間もかけられないし今までの策で行こう。オーギュスト、アレクシオ。頼むよ」
ジグハルトの説明が終わるや否やリーゼルが話を纏め、そして切り上げた。
もう煮詰まっていたし、俺がきっかけになってしまった気もするが、今のジグハルトので士気が下がりかねなかった。
上手いタイミングだと思う。
部屋には数名を残し、皆兵に指示を出しに外へ出て行った。
彼等にも頑張って街を守ってもらわねば!
「セリア」
「何?」
「セラ君を借りていいかい?」
「仕方ないわね。あまり無理はさせないのよ?」
「もちろんだ」
……どういうこと?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚