1895
「……おぉ、いっぱいいるね」
使用人と共に部屋から出るとすぐに廊下にたくさんの人間の姿が見えた。
普段は部屋の前に立っている使用人くらいしか見かけることがないだけに、この人数が歩いている光景は不思議な感じがする。
廊下のその様子に目を丸くしていると、前を歩く使用人が振り返ってきた。
「これでも大分減ったんですよ。こちら側に入らず扉の向こうで待機していたのですが、多すぎて場所を一階に変えたほどです」
そう言って、廊下の先に見える本館との扉を指した。
彼女曰く、こちらには客室だけじゃなくてセリアーナの部屋もあるし、警備の問題から一度に大量の人間が入ることを避けた結果、そうなってしまったらしい。
俺にとっては今廊下にいる人間だけでも驚きなのに、実際に部屋に訪れたのはこれよりまださらにいたのか……と驚いている。
何より。
「……そもそもウチって、そんなにたくさん人がいたんだね」
主に南館で働いている者は把握出来ているが、本館や北館まで含めたら顔を合わせることも少ないし、誰がいるのかなんて覚えきれないのは仕方がないだろう。
ただ、それにしてもそこまでウチで働く人間がいたとは思わなかった。
「セラ様は屋敷にいる時は奥様の部屋と執務室以外はほとんど出入りしませんからね……」
彼女はそう笑うと、部屋の前の使用人にドアを開けるように声をかけた。
◇
ミネアさんの部屋は、南館の二階に用意されている客室の中でも、特に広い……というより豪華な部屋だ。
テレサや、屋敷に宿泊する際のエレナが使用する部屋は個室だが、こちらはセリアーナの部屋と同じで複数の部屋が備わっている。
使用人のスペースもあるし、ちょっとした家って言ってもいいくらいだ。
ちなみに、今は各部屋のドアが開け放たれていて、もう大分減っているが、色々なサイズの箱が積まれているのが見える。
使用人たちに下げ渡す物がそこにあるんだろうな。
さて……それはそれとしてだ。
「来ましたよー。何か用事ですか?」
応接用のスペースで、ソファーに座っているセリアーナとミネアさんに訊ねた。
俺が彼女たちに呼ばれる心当たりは無いわけじゃない。
明日は俺も護衛として隊を率いて参加するわけだが、セリアーナとはしていてもミネアさんとはその打ち合わせを今までしていないから、出発前に色々話をしておくってことはあり得るだろう。
だが、部屋や廊下に普通に使用人がいる状況で話すことではない気がする。
そうなると、別の用件なんだろうが……思い当たらないな。
「おや?」
彼女たちのすぐ側まで寄っていくと、ミネアさんが無言で手招きしたかと思うと、自分の膝の上を叩いた。
「……?」
座れってことなんだろうし、恐らく「ミラの祝福」を要求しているんだろうが……。
一先ず俺は彼女の膝に座ると、同じく無言で加護を発動した。
これが正解だったのか、ミネアさんは「ありがとう」と一言礼を言うと、使用人に次の者を呼ぶようにと伝えた。
◇
俺が部屋に通されてから最初の数組は屋敷の使用人だったが、しばらくすると明らかにそうではない人物たちが混ざり始めた。
随分セリアーナともミネアさんとも親しげだし、わざわざ形式ばった挨拶をしているわけでもないし……恐らくミュラー家と近い人たちだろう。
彼女たちはミネアさんと親しげに言葉をいくつか交わしたかと思うと、何かを受け取って挨拶をして下がって行く。
この手軽さだと貴族って感じじゃないし……俺が会ったことのないゼルキス領から来ている商会の人間とかだろう。
ここ数日の間で、一気に仕事は済ませたはずだが……こういったプライベートの挨拶までは時間が取れなかったのかもしれないな。
随分簡単に済ませているが、相手もこちらの事情は分かっているだろうし、しないよりはずっといいはずだ。
とりあえず、俺はその挨拶を膝の上で大人しく見守っていた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




