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「もちろん!」
アレクのやれるか?という問いに一言で答えた。
そういえば元々アレクの盾のお試しに来ているんだった。
盾って受ける物であって、殴る物じゃ無いよな。
「よし。それからは降りるなよ?爪が効かない場合はこれを使え」
そう指示を出し、腰に差していた剣を渡してきた。
短めの所謂ショートソードだ。
これ持って【浮き玉】で特攻かければゴブリン程度なら余裕だろうが、爪が効かないことってあるんだろうか?
俺の自信の源なんだけど…。
「来たな。行くぞ」
「ぉ…ぉぅ」
アレクの声に、爪を見ていた俺は顔を上げた。
前を見ると、2匹の棍棒を持ったゴブリン。
既にアレクは盾を構えゴブリン達のすぐ前まで移動している。
そしてゴブリン達もアレクに向かって攻撃を仕掛け始めている。
そういえば今まで一撃で倒していたから攻撃するの初めて見るな…。
少し距離を取って上から見ているが、何というか…おバカ?
正面からアレクの構えた盾にガンガン手に持った棍棒を叩きつけている。
アレクにしか目が行っていない様で、少し離れた所にいるとはいえ、俺に全く気を向けていない。
これはいけるわ。
念の為さらに少し離れた位置から天井すれすれまで浮き上がり、天井を這うようにしてゴブリン達の背後に回り込む。
アレクはそれに気づいたようで、ゴブリン達は気づいていないが、念を入れて声を上げ注意を引いてくれる。
ナイスタンクじゃないか。
1メートル程の高さまで降りたところで一気に加速し、まずは右の方の首めがけて【影の剣】を伸ばし振り切る。
スパンッ!と全く抵抗なく首を刎ね飛ばし、もう1匹がそれに気づきこちらを向こうとしたが、振り切った勢いそのまま1回転し、同じように首を刎ねた。
い…一瞬じゃないか!
初の戦闘を終えた事と【影の剣】が無事通用したことに安堵し気を抜いていたが、握っていた左手に違和感を感じ開いてみた。
「聖貨じゃん…」
マジか。
「どうした?」
ゴブリン達の処理をしていたアレクがやって来て、左手を見つめていることに気づいた。
「見てこれ」
聖貨を見せると驚いた顔をしている。
一応、魔物を倒すと出るが確率は低いらしい。
アレクとエレナも数年かけてそれプラス俺の聖貨を合わせてようやく10枚になったそうだ。
いきなりゲットしちゃったぜ…!
◇
「なぁ…、お前も少し手伝わないか?」
「え?いや~ん…」
初戦闘を終え、その後順調に回数を重ね、ゴブリンなら一人でも余裕で勝利できるようになった。
では何を手伝うのか?というと、魔物の処理だ。
頭部に核があり、それを砕くと稀に遺物を残すが、死体が消滅する。
ちゃんとこれをしないと、残った死体が腐敗し悲惨なことになる。
この処理をするのはダンジョンを使う者のマナーなのだが…
「汚れんじゃん」
いや、どこのお嬢様だよって自分でも思うんだけどね?
「お前…」
「ハンナさんに叱られんだよ」
ミュラー家のメイド長、ハンナさん。
つい先日、何をしたのか結構偉い人である警備隊長が裏でハンナさんにガチで叱られているのを見てしまった。
その事を知っているのか、アレクは納得したような顔になった。
「…なんでそんな格好で来たんだ?」
どんな格好で来たかというと、メイド服である。
靴はサンダル。
ダンジョンはおろか、あまり外を出歩くのに適した格好とは言えない。
ではなぜ来たのか?
「服無いんだよね」
孤児院の時に着ていたボロ切れと、メイド服が2着。
選択肢は無い。
「…そうか」
「おう!」
寝る時は【隠れ家】に入っているし、それ以外はこの格好だしで、あまり服を買う必要性が無かったんだが、買った方がいいんだろうか?
前世でもスーツにはそこそこ金を使ったが、私服はユニクロとかで適当に選んでいたし、服にこだわりは無いんだ。
ジャージ無いかなー…?




