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雨季が明け数日が経った。
今俺は街の様子を調査している。
水路が溢れていないか、家屋が大きく損壊していないか、どっか崩れていないか……要は何か異変が起きていないか、だ。
とりあえずわかりやすい場所からと、街壁の内側に沿って張り廻らされている水路の確認からやっている。
この街は代官屋敷のある南西部が一番高く、対角線上に位置する北東部の教会地区が一番低くなっていて、もちろん水路には街の外へ繋がる排水溝があるが、最終的に低地にある教会地区に集まるようになっている。
そして、ゴミも一緒に集まる事で詰まり溢れてしまう。
まぁ、真面目に街を作るとどうしてもそんな風になるんだろう。
アレクの報告や俺自身の経験でもそうだった。
そしてこの2週間の雨量はほぼ例年通り。
しかし、今外壁に沿って上から街を一周したが、確かに水路の水量は普段より多いが、どこも溢れたりはしていない。
よく見ると真新しい排水溝があるし、リーゼルが改修工事をやったんだろう。
既存の水路にも柵が追加されているし、もしかしたら水路にも手を付けているかもしれない。
やりおる。
なにはともあれ、外壁や水路に問題は無かった。
次は街の中だな。
まずは西側から見ていこう。
◇
「うーむ……」
下にいる親子連れと目が合い、手を振りつつも唸り声が漏れ出る。
街の上空を地区順に見ているが、平和な物だ。
小さい問題ならば、例えば道がぬかるんだことで馬車が渋滞している所もあれば、連日の雨で傷んだのか、外に置かれている棚が崩れたりもしている。
少々けが人は出てはいるがどれも軽傷で、死者はおろか重傷者も出ていない。
……これは、リーゼルが偉いのか今までの代官が駄目過ぎるのか、判断に迷うな。
まぁ、今まで領主勢力の立場で揉め事を起こさないようバランスを取っていたからってのはあるかもしれないが、この街に住んでいた身としては複雑だ。
「おや?」
そのままフラフラと南東方面の冒険者地区に向かっていくと、冒険者ギルドに入っていくジグハルトの後ろ姿が見えた。
確か朝からアレクと一緒に、拠点候補地までの道の様子を確認に行っていたはずだが……終わったのかな?
せっかくだし俺も合流するか。
そう決め降下を開始した。
……壁の外だと一気に急降下するんだけれど、街中だとあまり速度を出すわけにもいかないからな。
エレベーター程度の速度で降りているが、何とも無防備が過ぎて落ち着かない。
「こんにちはー」
何事も無く降下を済ませギルド内に入ると、中にいた冒険者達がギロリと睨んでくる。
別に敵意とか持っているのではなく、習慣なんだろう。
入ってきたらとりあえずガンつける。
何処のチンピラかと。
ジグハルトが王都で寝泊まりしていた宿に居たおっさん達と近い雰囲気を感じる。
「セラか。どうかしたのか?」
入ってすぐの所で、おっさん達と話していたジグハルトが俺に気付いた。
随分馴染んでいるな……有名人。
「いんや、お嬢様の命令で雨の被害を調べていたんだけれど、ジグさんがギルドに入っていくのが見えたから合流しようと思ってね」
そう言い【浮き玉】を抱え込みジグハルトの肩に乗った。
屋内だとこの方が話しやすいのだ。
「そうか。アレクは商業ギルドに顔を出してからこっちに来るから、少し待つ事になるぞ?」
「いいよー。オレもこっちで少し話とか聞いておきたいし」
今ある冒険者ギルドはこの街が出来た頃からある物だ。
普通に使う分ならそれで問題無いが、いずれはこの街もダンジョンを拓くことになる。
そうなって来ると地下が無い事はもちろん広さも不足する。
この街はまだまだ土地が余っている事もあり、目下増改築中だ。
ギルドや工事関係者はもちろん、冒険者や出入りする業者からもあれこれ話を聞いて、何かあれば直接リーゼルないしセリアーナに話を持って行くのが俺の仕事でもある。
とは言え、この冒険者ギルド内の人間に教会と関わっている者がいないとは言えない。
1人で長居することは避けていたので、ジグハルトが側にいる今がいい機会だ。
あれこれ聞き出そう!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚