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「よいしょっ!!」
イノシシたちの前にゆっくりと進んで行った俺は、先頭までもう後数メートル……って位置に入った途端に【浮き玉】を急加速させた。
イノシシたちもフラフラと近づいてくる俺を警戒はしていたが、速度の変化に対応出来ていない。
先頭のイノシシは【琥珀の剣】の一撃と追撃を顔にまともに受けてしまい、フロア中に響くような悲鳴を上げた。
今まで向こうで戦っている兵たちの様子を気にしていたイノシシもいたが、群れのイノシシ全てが俺に注意を向けている。
「とりあえず、これで向こうに行くことはなさそうだね。それじゃー……」
俺は右手に持っている【琥珀の剣】を左手に持ち替えると、ミニサイズで【影の剣】を発動する。
さらに……一度背後を振り返り、向こうの様子を確認した。
前列と後列に別れて魔物の群れとの戦闘に専念しているようだし、いくらこの辺りの魔物が相手とはいえ、俺の様子まで気にする余裕は無いだろう。
これなら大丈夫だ。
「……ふっ」
【紫の羽】を発動すると、両手の恩恵品に意識を向ける。
【影の剣】と【琥珀の剣】どちらも、刃が薄っすらと紫色の光を帯びだした。
効果は上手く発動させれたな?
「よし……それじゃー、行こうか」
悲鳴も収まり全体が落ち着きだした群れに、ゆっくりと近づいて行った。
「さてさて……」
イノシシの群れは全部で八頭だ。
一ヵ所に固まってはいたが、四体ずつで少し距離をとっていたし二つの群れなんだろう。
少しサイズが大きい個体がいるし、そいつらがボスかな?
「はっ!!」
俺はボスたちを視界に収めつつ、手前の一体を右手で浅く斬りつけた。
普段の戦闘と違って【影の剣】の刃は短いままだが、一撃で仕留めるつもりもないし、この程度で十分だ。
とりあえず一太刀浴びせたしコイツはこれでよし……と一息ついていると、視界の端から別のイノシシが突っ込んで来るのがわかった。
「っ!? おっと……」
少々驚きはしたが、勢いに乗れるほどの距離はなく、動き出しに気付いてから避けても十分に間に合う程度。
躱しながら左手の【琥珀の剣】で斬りつけた。
【琥珀の剣】の攻撃そのものじゃ、痛みはあっても大したダメージにはならないだろうが、その痛みに驚いたのか転倒している。
「ふぅ……こっちはどれくらい効果があるんだろうね? 初めの一体はまだ動いているけど……」
初めに斬りつけたイノシシは、それで用心するようになったのか突っ込んで来ることはないが、それでもウロウロしているし足取りはしっかりしている。
毒が回っているようにも見えない。
「まぁ……突破されて向こうに行くことが無ければいいんだし、ここで足止めが出来ているんならそれでもいいんだけどね」
俺のこの場での最優先事項は、イノシシたちを向こうに行かせないようにこの場に引き付けることだ。
別に倒すだけなら簡単なんだが、下手に一体でも倒してしまったら他のイノシシがどんな風に動くかわからないからな。
「【緋蜂の針】があればイノシシ程度の突進は簡単に止められるんだけどね。……二つだけじゃ足りないかもしれないし、尻尾も使おうか」
攻撃手段を三つ……ってのは滅多にないことだが、前に出てきたイノシシを狙うだけだしどうにかなるだろう。
「それじゃー……ほっ!!」
抜け出ようとしたイノシシの前に回り込むと、【浮き玉】を一回転させて尻尾を叩きつけた。
◇
「……おやぁ?」
イノシシの群れの前に回り込んで、足止めに専念することそろそろ十分ほどが経った。
足止めが最優先だし、適当に斬りつけたり殴りつけたりするだけに留めていたから、まだ一体も仕留めることは出来ていないんだが……一体のイノシシが急によろめいたかと思うとそのまま地面に倒れこんでしまった。
頭部や背中から血を流しているし、俺が何度か斬りつけた個体なんだろう。
……殴りつけたかどうかまではわからないが、ようやく毒が回って来たのかな?
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




