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南館の屋根裏の見回りを終え、本館に移って来たが、こちらにはリーゼルの部屋がある。
2階にある執務室から上がって来れるようになっているらしい。
頑丈な壁にドアとさらに透過板の窓まである。
一目でわかるけれど、あれで良いんだろうか?
「……あそこだよね?」
「ええ。向こうと違ってこちらは警備の兵が常駐しているから、あれで良いのよ」
「へー……お?」
浮いているから足音はしないが、今の話声が聞こえたのか慌てて中にいた兵士が出てきた。
「セリアーナ様。どうかされましたか?」
「屋敷の点検よ。気にしなくていいわ。お前は任務に戻りなさい」
「……はっ。それでは失礼いたします」
多少釈然としない様子ではあったけれど大人しく戻って行った。
まぁ、子供を膝に乗せた状態でいきなり現れたら何しに来たんだ?って思うよね。
ハプニングと言えばハプニングではあったが問題はそれくらいで、南館と同じく本館の点検も何事も無く終えた。
掃除は行き届いていなかったが、雨漏りも無くネズミ一匹姿を見なかった。
ここを建てた職人の腕はいいって事は確かだ。
「終わっちゃったね。地下とかは無いの?」
「地下?食糧庫はあるけれど、わざわざ行くほどの物は置いていないわ」
「ふーん……」
地下。
完成しているかはわからないが、抜け道があるんだよな。
アカメと遊んでいる時にたまたま人が地面の下を通っているのを発見した。
セリアーナも気付いているだろうし……まだ秘密なのかな?
この屋敷は高台にあるが、その斜面に沿っていくつか施設が建てられている。
恐らくそこのどれかに抜ける様になっているんだろう。
まぁ、使う機会は無いだろうけどそのうち教えてもらえるのかな?
◇
屋根裏の点検を終え、その後も屋敷中あちらこちら回ったのだが最終的に行きついたのは使用人の控室だ。
通常だとこの屋敷は20人位が働いているが、雨が強く通勤に不便で、また客も来ず仕事もそれほど無いため15人ほどで回している。
それでも余るようで、控室にいる人間は多めだ。
だからこそ、【ミラの祝福】をサービスするのに都合が良かったわけだが、お嬢様が乗り込んで来るとなると話は別だ。
これは俺が上手く間に入らないと……そう思っていたんだけれど。
何故か盛り上がっている。
そういえばこのお嬢様、領主の娘としてあちらこちらに慰問だなんだで顔を出しているから平民相手のコミュ力も高いんだよな。
「そう言えばこの街は孤児の扱いはどうなっているのかしら?書類では孤児院に預けられる事が多いようだけれど……」
最初は仕事の事から始まり、代官交代の影響や新領地の件、冒険者や出入りする人間の増加と街の様子から聞き始め、いよいよ教会絡みの事を聞き始めた。
「そうですね……大抵は孤児院行きが多いです。そもそもこの街で子を捨てるなんて、冒険者か行商人くらいですから。そうよね?」
1人がそう言い、同意を求めると皆も頷いた。
「あそこの子達は冒険者地区かそっち寄りの店で働いたりはしていましたけれど、あまり西側には来ないから詳しい事は……。大きくなったら外の開拓の手伝いとかをしているらしいですけれど……」
うん……大体あっているな。
この街は中央広場から大きく西と東で分かれている。
西がややお上品で、東ががさつ。
住み分けが出来ていてあまり関心を持っていないんだろう。
その後もお喋りは続いたが長居すると休憩の邪魔になるからと、20分程で席を立つことにした。
まぁ、セリアーナとの壁というか溝は埋まったんじゃないだろうか?
◇
「数年前、東側に謎の盗賊が現れたそうね。食料だけ持ち去ったそうだけれど……」
「不思議だね。金目の物は持ち去らなかったのかな?」
「使い道が無かったのかしらね?」
「そうかも知れないね」
「しっかりバレていたわね……覚えている店を後で教えなさい。春からの拠点造りの炊き出しの仕事を振るわ」
「……ごめんね?」
「本は……あれはいいわね」
「そうだね」
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚