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「暇ね」
「暇だね……」
あと数日で雨季が終わるだろうという今日。
今年一番の雨に見舞われた。
今日明日はこのまま降り続けるだろう。
同じ敷地内で目と鼻の先に建っている4人の住宅ですら雨で霞んで良く見えないほどだ。
客も来ないし、彼等は今日明日は休みになった。
伝えに行ったのは俺だ。
今までチャレンジしていなかったから今日初めて知ったが、【浮き玉】は雨に弱い。
いや、俺が弱いのか……?
傘をさしても意味が無いだろうからと、ずぶ濡れ覚悟で飛び出したが、無意識に雨を避けようと変な軌道を描いていた。
上から見ていたセリアーナ曰く、敷地から出て行くと思ったとか……。
気合を入れて、前進しようと強く考えないと真っ直ぐ進めなかった。
思わぬ弱点ではあるが、対処できるしこの機会に知れたことは良かった。
その後は【隠れ家】で着替えと洗濯、シャワーを浴びて部屋でダラダラしている。
髪はセリアーナに乾かしてもらい、しばらく着せ替え人形にされていたが、流石に飽きて来たらしい。
「【浮き玉】使う?」
「……そうね」
俺の提案に何やら考え込んでいる。
何かしたいことでもあるのかな?
宙返りとか?
「借りるわ」
「ほい」
「後それも」
【浮き玉】に乗ったかと思うと、今度は左耳に付けてある【妖精の瞳】を指してそう言った。
「いいけど……何するの?」
渡すとそのまま耳に付け即発動した。
相変わらず、えぐいビジュアルだ……。
「さ、来なさい。行くわよ」
……どこへ?
◇
この屋敷は、玄関のある本館と南館、そして今建築中の北館で構成されている。
本館が3階建てで、南北は2階までだ。
ただし、どこも屋根裏部屋がある。
「ほっ!」
手のひらに明かりを出した。
最近身に付けた照明用の魔法だ。
戦闘で使っている「ふらっしゅ」は光量最大、持続時間最小で発動すると即消えるが、こちらはほどほどの光量でその分長持ちする。
一応この使い方が正しいのだが、【竜の肺】で底上げした状態で使うのに慣れていたため少々手間取ってしまった。
ともあれその明かりで周りを照らすと、積まれた木箱が目についた。
屋根裏は物置に使われる事が多いが、ここの場合は万が一の際の砦の役割も持っている。
その為、矢やら剣、槍と武器が置かれている。
「はー……来たばかりの時に屋根裏には入らない様言われたけど、こんなのが置いてあったんだね」
「そうね。兵舎が完成すればそちらにも移すでしょうけれど、いざという時はここを砦として使うからある程度は残すでしょうね。そこから矢や魔法を撃ちかけるのよ」
そう言い窓を指した。
透明な板がはめ込まれているが……。
「ガラス?」
「違うわ。透過板よ」
透過板。
魔物の骨と何かを色々やって作る、その名の通り透明な板だ。
アクリル板の様な物で、ガラスよりは透過度は低いが、窓に嵌める程度なら問題無い。
安いわけでは無いが高価でもろいガラスよりは、と余裕のある平民の家などでも窓として使われている。
……が、それでも屋根裏の窓に使うとは。
確かにこれなら外の監視も出来るが……侮りがたし。
「何もいないわね……」
セリアーナは俺が唸っている間に周囲の確認を終え、屋根裏の中を進んで行った。
延焼防止の為か一定間隔でドア位の大きさの枠が開けられた仕切り板が設置されている。
中々のリテラシー。
「埃っぽいね」
「置いてある物が物だけに、ここは掃除は必要ないと言ってあるの。仕方ないわ。……雨漏りもしていないわね」
【浮き玉】で浮いているから問題無いが、埃が薄っすら積もっている。
たまに誰かが窓を開けて空気の入れ替えでもしているのか、階段から窓に向かって足跡が残っている。
そして、今セリアーナが言ったように天井を見ると、板がむき出しになっているが雨漏りは一か所もしていない。
窓の枠も濡れていないし、ここを手掛けた職人の腕は中々いいんじゃないだろうか?
「全部同じようなのが置いてあるんだね。他のは置かないの?」
一通り南館の屋根裏を見終えたが、束ねられた槍に剣、木箱に詰まった矢。
何処も一緒だ。
「あまり出入りする場所でも無いから、頻繁に入れ替える様な物は置けないわ。カビが生えたり痛んだりしたら困るでしょう?」
「そりゃそーか」
「ここは問題無いわね。お前も確認して頂戴」
「ほい」
アカメの目で全体を見るが、魔力の反応は何も無し、だ。
「何も無いね」
「結構。次に行くわよ」
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚