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「……それ、こちらに飛んでこないように気を付けるのよ?」
セリアーナがソファーに寝転がっている俺を見て鬱陶しそうな声でそう言った。
彼女は自分の机についているし、俺とは離れているんだが……。
「うん、気を付けるよ。まぁ……練習には丁度いいしね」
俺がそう返事をすると、セリアーナは「はあ……」と溜め息を吐いた。
ちなみに俺が何をしていて、セリアーナは何を警戒しているのかというと……木剣を頭上に放り投げては、尻尾で巻き取るってことを繰り返していた。
昨晩のエレナの話を参考に、新しい戦い方のイメージトレーニングを行っているんだ。
俺が普段の戦闘で尻尾を使う時は、最大サイズにして思い切り振り回したり、【浮き玉】の軌道を安定させるための支点にするために、木に巻き付けたりすることが多い。
生物に巻き付けることもあるにはあるんだが……コレを巻き付けられるようなサイズの生物との戦闘中に、近くに留まり続けるような真似は避けてきた。
大体【影の剣】でスパッと片付けて来ていたしな……。
ダンジョンに行くのが何時かはまだ教えてもらっていないが、昨日のリーゼルたちの話しぶりだと近いうちなのは間違いないだろう。
それまでに、少しはこの巻き付けるって動作にも慣れておきたい。
ってことで、朝食を終えてからこんなことを繰り返していた。
「……訓練所で行えばいいんじゃなくて?」
「訓練所ねぇ。的はあるし巻き付けるだけ……ならいいんだけど、アレって動かないしさ。あんまりいい訓練にはなら無さそうなんだよね」
訓練所を使うメリットは、尻尾を最大サイズにすることが出来るから、実戦と同じ感覚での訓練が出来るってことだ。
んで、デメリットは……あの的は動かないから、同じ動作をただ繰り返すだけってことになりそうなこと。
加えて、的が壊れた場合は新しく魔法で作り直す必要があるんだが、俺はソレを出来ないため、誰か一人付き合ってもらう必要があるってことだ。
流石にそれだけのために、騎士団や研究所から人を連れてくるわけにはいかないだろう。
そう伝えると、セリアーナは「ああ……」と溜め息交じりに頷いた。
「エレナたちも今は動かせないものね……」
「そうそう」
フィオーラは今日は、休憩所に運ぶ物資の確認のために研究所と騎士団本部を往復することになっている。
昨晩聞いた限りだと、エレナの方は今日は特別な用事は無いそうだが、テレサもフィオーラも不在になるし、セリアーナのもとを離れるわけにはいかない。
それじゃー、セリアーナも誘って一緒に訓練所に行くか……っていうと、流石にセリアーナはそこまで暇ではない。
「仕方が無いわね。まあ……気を付けて頂戴ね」
「はーい」と返事をして、尻尾の操作に神経を集中した。
◇
昼を回った頃、部屋にエレナがやって来た。
俺もセリアーナも、エレナはもう少し早い時間に来るのかと思っていたが、思ったよりも遅かったことに驚いて、何かあったのかと訊ねると、商業ギルドの人間との面会が詰まっていたらしい。
昨日の今日ではあるが、ダンジョン内の休憩所の立て直しの情報は商業ギルドにも伝わっていて、エレナに騎士団への口添えを頼みに来ていたんだとか。
そこまで大々的に商業ギルドが介入出来るような箇所は無いはずなんだが……それでも、騎士団主導の休憩所は今後もずっと続いて行くだろうし、少しでも絡んでおけば騎士団との取引のきっかけになるかもしれない……ってことで、新参の商会なんかが特に多かったそうだ。
商会にとっては難しい作業でもないのに、重要なポジションでもあるしってことで、随分と注目を浴びている案件らしい。
「全員の話を聞いたの?」
「聞いたよ。真っ当な手続きを経て話をしに来ているしね。それくらいはさせてもらうよ」
何でもないといった表情でそう言ったエレナを見て、俺は「えらいなぁ……」と感心していた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




