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「おお…ここが」
冒険者ギルドの地下2階。
そこにあるダンジョン入口の前にいる。
幅は5メートル高さは3メートル位だろうか?
意外と小さい気がする。
材質は何だろうか?
石っぽいけれど多分違う。
奥まで繋がっているし、ダンジョンも同じもので出来ているかもしれない。
昨日、ダンジョン行きの事を聞かされた後、色々調べようとした。
調べようとしたんだが…。
許可をもらい書庫であれこれ漁ってみたが、この世界の常識にまだ疎い自覚はあるが、俺の知識が追い付いていないのか、それともただ単に難解なだけなのか…。
数少ないわかった事は、ダンジョンには魔物が出て、遺物と聖貨を手に入れる事が出来る。
このゼルキス領都のダンジョンはゴブリンやコボルトといった妖魔種が出る。
それだけだ。
…わかったとは言ったが、実はよくわかっていない。
魔物についても浅瀬までしか記されていなかった。
他にも数字なんかも記されていたが、何と比較していいかがわからず諦めた。
あえて情報を絞っている気もしたが、何か理由があるんだろうか?
「よし。行くぞ!」
「はいよ」
アレクに応え後ろについて行く。
幸い保護者付きだ。
調べても分からないことは体験していこう。
◇
ダンジョン内部を進むことしばし。
入口から一回り程更に広くなっている。
床も壁も天井も、入口と同じく石の様な物で出来ている。
ただ、敷いたり組み合わせたりでは無く、繋ぎ目の無い一枚の何か、でだ。
照明があるわけでもないのに、通路全体がぼんやりと明るいのも不思議だ。
少なくとも人力じゃなさそうだ。
「そろそろ出てくるからな。お前は下がって見ていろ」
そう言うとアレクは足を速め始めた。
「来たぞっ!ゴブリンだ」
目の前に2体の2本足で立つ小柄な生き物が現れた。
おお…これが…。
「はっ!」
そして現れてすぐ2体とも叩き潰された。
…やべぇ。
アレク。
本名はアレクシオ。
右手にメイスと左手に【赤の盾】を装備した大男だ。
なんでも西の方の小国家群のどこかの国の生まれで、商家の3男と言っていた。
名前の由来はその国の有名な将軍から。
そこそこの教育は受けていたが、3男ということもあり家を継ぐ事も無く、割と自由に育てられた。
名前もあってか騎士に憧れ、剣や槍、乗馬なども習い、14歳の時に実家の商隊の護衛の一員になるも、思ったよりも才能があり、1年後更なる活躍の場を求め傭兵に転向。
護衛や幾つかの紛争を経て、またしっかりとした教育を受けていたこともあり、主に貴族や大商家相手の仕事が増え、そこそこの名声と稼ぎを得る。
そして3年前からセリアーナと契約し、お抱えの護衛兼冒険者として働いている。
ってのは聞いたんだが…やべぇ。
まず背が高いんだ。
多分190センチ以上。
体重は100キロ位か、もしかしたら超えているかもしれない。
野球選手じゃ無い。
ラグビー選手でも無い。
近いのは、水泳選手だろうか?
近い体型の人が思いつかないなーとかは思っていたが、そりゃそうだ。
地球じゃ両手にそれぞれ結構な重さの物を持って、生き物叩き潰す様なことを想定したトレーニングなんか積まない。
そーいや、聖貨を回収する部隊の人間も槍で狼みたいな魔獣を吹き飛ばしていた。
…おっかねー。
その後も何度か魔物と遭遇したが、大体アレクが即撃破していた。
間近で見る初めての魔物や戦闘も、その衝撃に全部持って行かれてしまう。
ゴブゴブ達があまり強くないってこともあるが、それ以上にアレクが強い。
なんだこの化け物?
とは言え、そのお陰で冷静に見る事が出来た。
俺でも行けんじゃね?
そんなことを考えていたら、アレクが話しかけてきた。
「どうだ?浅瀬だと1匹か2匹ずつしか出てこないし、俺が押さえておけばお前でもやれるか?」