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オークを倒し終えて一息ついていると、上から三人が下りてきた。
「ご苦労様。急に動いたけれど、何かあったのかしら?」
「効果が解けでもしたの? 上から見ていても変わったところはなかったわよ?」
やはり彼女たちからは見えていなかったみたいだな。
俺が「動いてたんだ」と伝えると驚いた表情をしているが、すぐ側にいた俺でも気付けなかったくらいだし仕方が無いだろう。
ともあれ。
「オレは向こうの死体を処理してくるよ」
フィオーラが仕留めた分も残っているし、片付けは大事だ。
もちろん、今俺の周りにもオークの死体が転がっているんだが……。
「ええ。私たちは軽くだけれど、ソレを調べておくわ」
フィオーラがその死体を眺めながらそう言った。
毒で倒れてたオークはもちろんだが、最後に倒した二体もそれなりに毒の影響が出ていてもおかしくはなかったから、調べてみたら何か異常が見つかるかもしれない。
こんなダンジョンの真っただ中で、たった今斬り倒したばかりの死体を調べてもらうってのは申し訳ないとは思うんだが。
「持って帰れたらいいんだけどね……」
「小型種ならともかく……コレは私たちでは無理よ」
俺のボヤキに三人は苦笑している。
オークはな……【祈り】を使ったとしても俺たちが運べる重さではない。
【隠れ家】を利用するにしても簡単に出来ることじゃないし、それくらいなら外でオークでも狩ってきた方が楽なくらいだ。
もう少し先にある休憩所に駐留している兵たちだったり、昼からダンジョンに入って来る合同部隊に頼むってのも……。
まぁ、もし何か変化を見つけて、研究所で本格的に調べたいって言えば、今度俺が外で同じように仕留めてきたらいいだろう。
ってことで。
「まぁ……とにかく行って来るよ」
そう言うと、俺は魔物の処理に向かった。
◇
まずは小型の妖魔種を処理していき、続けてオークの処理を済ませた。
ちなみに、聖貨も含めて収穫はゼロだ!
「群れ一つ潰したけど……何も無しか。まぁ、フィオさんに手伝ってもらったってのもあるし、そんな時もあるよね」
本気で稼ぐつもりで潜るのなら、いくつものホールを渡り歩きながら一太刀で仕留めていくし、討伐のペースが段違いだ。
それと比べるのがそもそもおかしいか……と自分を納得させて三人のところに戻っていく。
【浮き玉】にはセリアーナだけが残り、二人はオークの死体を剣で突いたりひっくり返したりしているが、表情を見るに何か発見があったようには思えない。
「アッチは片付けたよ。コッチはどう?」
それでも、一応何か発見があったかと訊ねてみるが、二人は揃って首を横に振る。
「何も無しか。……まぁ、そうだよね」
あくまで恩恵品を使った魔力由来の毒だし、実際の毒物のように死んでも体内に残り続ける……なんてことは無いだろう。
だからこそ、【紫の羽】を使った狩りで倒した魔物も素材に利用出来たりしたんだし、強化してちょっと毒の作用の仕方が変わったとはいえ、特性そのものは変わっていないってことだな。
納得して頷いていると、フィオーラがオークの死体に魔法を撃ち込んで消滅させた。
これでこのホールの始末は完了だな。
「さてと……それじゃあ、次はどうするの? 引き返してもまだ初めのホールは魔物は湧き直してはいないでしょうし……次のホールに移るのかしら?」
ホールの様子を見るためなのか上空に移動していたセリアーナだが、地上まで下りて来るとこちらを向いてそう言った。
一応セリアーナがリーダーでもあるんだが……俺に選ばせるつもりなのか。
まぁ、セリアーナの目的はもう達しているし、俺の好きにしていいってことなんだろうが……なかなか難しいな。
俺は即答せずに「そうだね……」と呟くと、残り時間も含めて色々と考えることにした。
概ね強化したことで変わった点なんかは把握出来たと思うが、それでもまだ完璧だとはとてもじゃないが言えない。
特に他の恩恵品も含めた効果は、もっと色んな魔物を相手に確かめたくはある。
だが……。
俺はしばらく考え込んでいたが、顔を上げると「戻ろうか」と皆に告げた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




