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「これ……王都のお貴族様達もやっているんでしょう?」
「大旦那様とか大奥様の許可が下りた人達だけ、ね。お金も1日金貨5枚貰ってるけど」
1人の疑問に答えると、周りの皆が驚き喜んでいる。
華の王都の貴族。
この国のトップ層にいる人達ですら簡単に受けられない術を、辺境の平民が受けている。
優越感に浸れるだろう。
存分に浸ってくれ!
「1日でやれる人数に限りはあるけれど、雨季の間は暇だから全員にやってあげなさいってお嬢様がね。殿下にも言ってあるし施療を受けてる間はここで休憩していていいからね」
またあちらこちらで声が上がる。
まぁ、ここはそれ程忙しくないとはいえ、やっぱり公然とサボれるのは嬉しいもんだ。
そんな訳で、秋の3月。
雨季真っ盛りだ。
そして、ここでもエステサロン・セラが臨時オープンしている。
偶に手伝いはするけれど、積極的に輪に入っていなかったし、冒険者の仕事もあったからあまり話す時間も無かったが、この機会に仲良くなっておけと言われた。
領都出身のセラちゃんに、馴染みのいないこの街で冒険者や兵士といったおっさん連中以外の知人を増やしておけって事なんだろう。
もちろんセリアーナも自分のイメージアップだったり他にも本命の目的はあるのだが……、普通に話しかければいいのになんでこう回りくどい方法を好むんだろう?
……暇なのかな?
「セラちゃん、確かお嬢様と一緒の部屋で寝ているのよね?お嬢様にもこの加護は使っているの?」
「毎日じゃ無いけれど、夜に時間のある時とかたまにやってるね」
またまた上がる声。
あまりセリアーナはこの屋敷の人間と触れ合わない。
部屋には大抵エレナかフィオーラが詰めているし、最近はアレクとジグハルトもいる。
部屋に入るのはお茶を出したり、掃除や寝室を整える時位かな?
身分云々抜きにしても近づきがたいからか、何を聞いても新鮮なんだろう。
俺もそこまで話せるネタはもっていないが、大いに盛り上がった。
◇
「……そんなわけで、お嬢様は結構謎の人って扱いだったね」
「そう……まあいいわ。ご苦労だったわね」
夜の報告会。
もしくは密告会だ。
まぁ、そんな大げさな事じゃない。
要はお上品な場所では耳に入ってこない噂を、俺を通して使用人から集めようってだけだ。
外は雨が降り続いておりエレナとアレクも夜になる前には自宅に戻っていて、部屋には俺とセリアーナの2人だけ。
ただのお喋りみたいなもので、ついでだからとベッドでうつ伏せになってもらい【ミラの祝福】を使いながら行っている。
「2人の事はどう?」
「それとなく漏らしたけど、どっちもまだあまり屋敷の人との交流が無いから、ピンと来ないみたいだね。あぁ、アレクは人気あるかな?」
「そう……」
2人。
エレナとアレクだ。
この2人は結婚予定なのだが、同僚とはいえ貴族と平民という身分差に、それプラスエレナには婚約者もいる。
その相手が文官肌というか、エレナのお気に召さなかった事もあってこうなったという事もある。
騎士の家系だからか、夫になる相手もそう言う相手が良かったらしい。
アレクは考え直すよう言っていたらしいが、セリアーナとのタッグに押し切られたとか。
婚約はエレナの親父さんが話を纏めていたそうで、親父さんを納得させるためにアレクは頑張っていた。
相手側の面子もあるし、そこは仕方が無いと思う。
ただ、今もやっているようにこの新領地でアレクに色々仕事を振って功績をあげさせる予定だったが、さらに魔人の討伐に二つ名に冒険者目録への掲載と、色々想定以上の積み重ねがある。
来年王都へ向かう時に領都で護衛の兵士を補充するが、その護衛部隊の隊長はエレナの親父さんが務めることになっている。
当初の予定では、セリアーナ達が結婚して、その後に新領地で籍を入れる予定だったらしいが、このペースで順調に進めて行けば、王都に行く前に済ませられるんじゃないか?
という話になっている。
まだ半年近くあるし、それならこっちで先に結婚は確定と世論を作り上げて、領都まで流させようとセリアーナが考えた。
第一歩で躓いてしまった感じだけれど、おばちゃん達は恋愛話は好きだろうし、冬までには広められるかな?
「ちょっと考えてみようかしらね……」
「ほどほどにね?」
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚