1783
「うん……ちゃんと全滅してるね。だいじょーぶだよー!」
セリアーナたちが今しがた倒した魔物たちに止めを刺している間、警戒のために俺は上からホール全体を見て回っていた。
あれだけ短時間で一気に決めたから大丈夫だとは思っていたが、隣接するホールから魔物の増援が来る可能性もゼロじゃなかったしな。
もっとも、そんな事態にはならなかったし、先程の魔物たちの突進に混ざらずに潜んでいるような個体もいなかった。
ここでの戦闘は終わったことを確認して、地上のセリアーナたちに合図を送るとエレナが返事を返してきた。
「ありがとう! 一先ずここを出るから、通路まで先に行ってくれるかい?」
皆はこのホールに入ってからすぐに魔物との戦闘に移ったから、入り口の通路付近からほとんど動いていないし、まだこのホールの全体を見れていない。
通路の場所と、ついでにそこに魔物がいないかの確認もしておくか。
俺は「了解! あっちだよ!」と返事をして、皆を先導するように通路の方に飛んで行った。
◇
さて、ホールを抜けて通路にやって来た皆は、ここまでの戦闘で消耗した武器の手入れを行っていた。
苦戦するようなことはなかったが、短い時間で何十体を相手に戦っているから、剣の切れ味が大分落ちていたようで、二人とも随分しっかりと汚れを落としたりしている。
「今のうちに次のホール見て来ようか? 群れの組み合わせがわかっている方がセリア様たちも動きやすいでしょ」
ここまで尻尾で殴るくらいしか戦闘に参加していない俺は、全く消耗していない。
普通のパーティだったら、万全な者が周囲の警戒を担当するもんだろうが、このメンツだとそれは必要ないだろうし、それなら次のホールの情報を探ってきた方が効率がいいだろう。
……そう思ったんだが。
「私の訓練はもうこれで終わりでいいわ。次のホールからは【紫の羽】の検証をしましょう」
「もういいの……?」
一気に突破した浅瀬を含めても、まだそれほど戦闘を行っているとはいえないし、二人もそれほど消耗はしていないだろうに……。
俺がそう訊ねると、セリアーナは「ええ」と頷く。
「もうダンジョンに入って四十分近く経っているでしょう? これ以上奥に行くと中型や大型が増えて来るでしょうし、大した訓練にもならないわ。後の時間はお前が使いなさい」
「ふぬ……」
セリアーナのここまでの戦いを見ていたが、そこまで鈍っているようにも見えなかった。
セリアーナが言うように、これ以上時間をかけても魔物を倒すペースは上がっても、体を動かす訓練にはならないだろうし、彼女の訓練は一先ずこれで終了にしてもいいんだろう。
「わかったよ。それじゃー……オレが【小玉】を使うね」
フィオーラの下に行くと、彼女が使っている【小玉】と【浮き玉】を交換した。
【浮き玉】はさらにエレナに渡ることになるが、それは彼女の準備が完了してからだし、出発もそれからだろう。
その前に、久しぶりに使う【小玉】の感覚を掴んでおくか。
三人を他所に、俺は通路内を飛び回って【小玉】を慣らすことにした。
◇
通路で【小玉】に乗り換えてから十分ほど時間が過ぎたところで、セリアーナたちの手入れが完了して、次のホールに移動することになった。
先日屋敷で話した通り、エレナがセリアーナとフィオーラを抱き上げて【浮き玉】に乗っているが、【浮き玉】の操作に支障はないようだ。
もっとも、エレナの両手が塞がっているし【風の衣】も無いから、防御面では万全とは言えないが。
「オーガの姿は見えないし……投石の警戒はいらないかな?」
天井近くに止まって下を見ながら、俺はそう呟いた。
この辺りで上空にいて気を付けるのはオーガの投石なんだが、このホールだとその心配もいらないようだ。
「そうだね。援護は魔法のみにして極力地上には近づかないようにするから、君は私たちのことは気にしないで動いて構わないよ」
「うん。それじゃー……行って来るから、一応皆もどんな風に変化してるのかとか見ておいてね」
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




