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「それでは始めますよ。……はっ!」
離れた位置からエレナが群れの真ん中に魔法を撃ち込んで、群れ全体をこちらに呼び寄せた。
魔物たちは種族差も個体差もあって、こちらに向かって突っ込んで来る速度はバラバラだ。
エレナの魔法がいい挑発になったみたいで、先程までの警戒心の強さや慎重さはどこにもないな。
そして、その間延びした魔物の群れの真ん中にフィオーラが魔法を撃ち込んだかと思うと、さらに二発三発と続けていく。
「はい。大体……四体ずつにわけたわよ。今のうちに片付けてしまいなさい」
フィオーラはそう言うと、いつでも援護が出来るようにと【小玉】を上昇させていく。
俺は……どうしようかな。
あのまま固まって突っ込んで来たら俺も戦おうかと思ったが、綺麗に分断されたし……俺抜きでも結構余裕そうだ。
俺も上に行こうかな……と考えていると。
「セラ、君はセリア様の側について!」
「お前は牽制を任せるわ」
二人はそう言うなり、手前のグループに向かって突っ込んでいく。
俺は「りょうかい!」と返事をすると、二人の後を追った。
◇
まずは一番先頭を走っていたグループとぶつかった。
このグループは三体のコボルトだ。
戦闘能力はともかく、足の速さは後ろに控えているオークたちよりはずっと上だし、こうなるのは当然か。
ちなみに、その三体は二人の援護に付いている俺が何をする間もなく倒された。
まぁ……数と強さを考えたら妥当な結果だ。
んで、その三体を倒したタイミングで、その後ろのグループもやって来たが……編成はゴブリン四体で、こちらもまた一瞬だった。
魔法抜きでも一往復で倒せていたのに、今は二人とも魔法を使用している。
これもまた妥当な結果だろう。
そして、また倒したタイミングで次のグループが突っ込んできた。
このタイミングの調整をしているのはフィオーラだ。
上から魔法を撃つことで上手くコントロールをしているが……最初に分断をしてから十発も撃っていないのに、完璧にコントロール出来ているのが不思議でならない。
ともあれ。
「コイツはオレが止めとくよ」
お次のグループには一体オークが混ざっている。
他の小型を倒している間に突っ込んで来られたら面倒だし、コイツは倒しはしないが、俺が足止めをしておこう。
ようやく出番だな。
俺はオークの目の前に飛んで行くと、「よいしょっ!」と尻尾を頭部に叩きつけた。
小型の魔物相手なら結構なダメージになるこの一撃も、デカくて頑丈なオーク相手だと大したダメージにはならないだろうが、イラつかせるには十分な効果だ。
セリアーナたちの方に突っ込んでいこうとしていたが、足を止めて俺に向けて手にした棍棒を振りかぶっている。
普段ならこのままあっさりと倒してしまうんだが……セリアーナたちが向こうを片付けてこっちに来るまで、とりあえずこの状態を……。
「上出来よ」
の一言と共に、セリアーナとエレナが俺のすぐ脇を駆け抜けながらオークに向けて魔法を放った。
魔法が直撃したオークは仰け反り、その隙を突いて懐に飛び込んだ二人が一気に腕と足を斬りつける。
そして、エレナが片腕を斬り落とすと、セリアーナが止めに首を貫いた。
いやぁ……わかってはいたが。
「鮮やかなもんだね。オーク程度なら相手にならないかな?」
「お前たちが隙を作ってくれているからよ。残りは?」
「オークが五体だね。強さは大差ないよ」
セリアーナは俺の言葉を聞くと、オークの首から剣を引き抜きながら横に振って血を払った。
戦意はまだまだ衰えていないようで、さっさと次に行きたそうにしている。
「エレナ?」
「いつでも行けます」
セリアーナはエレナに頷くと、フィオーラに見えるように剣を振って合図を送る。
上からのフィオーラの牽制の射撃が始まると、「行くわよ」と再び走り出した。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




