1780
魔物の群れを維持したまま、一部を外に引っ張り出す。
これは意外と難しかったりする。
群れから警戒をされつつも、脅威に思われない程度に油断させて、弱そうなのを少しずつ送り出させる……ってのは、そう簡単に出来ることではない。
というよりも、俺くらいしかやろうと思わないんじゃないか?
パーティで近付いたら、警戒されて群れごと襲い掛かるだろうし、かと言って一人で近付くのも、変なのが来たってことでやっぱり警戒されるだろうし……。
山とか森みたいに見通しが悪くて、障害物がたくさん有る場所ならともかく、ここみたいに比較的見通しがいい場所だと……やる奴はいないよな。
「まぁ……オレだって【浮き玉】と【蛇の尾】がなかったらやらなかっただろうしね」
そう呟きながら群れの端に位置している魔物に近づいて行く。
空を飛んで、尻尾を振り回す変な生き物……大方そんな風に認識しているんだろう。
俺が近づいてくると、群れの奥に視線を送って指示を仰ごうとするが……本隊の方はまだ俺のことを何とも思っていないようで、何の返事もない。
無視してもいいが気にもなるし……とりあえず追ってみるか……って感じで、二体三体と引っ張り出せている。
既に二度同じような方法で釣り出しているが、セリアーナたちが素早くかつ静かに倒している上に距離もあることから、本隊も俺たちに気付いてはいても本格的に警戒をしているわけではないようだ。
もう少しいけるな。
尻尾を前に垂らすと、高度を下ろしてゆっくりと群れに近づいて行った。
◇
順調にさらにもう一度釣り出すことに成功して、群れはそろそろ半分にまで減っている。
小型種の数も減ってきたし、もう出来て後一回くらいかな?
無理をしたら群れ全体で一気に突っ込んできそうだ。
俺が釣り出しているからとはいえ、二人でほとんど消耗も無しに短時間でこれだけ減らせているし、その気になれば二人であの群れを全滅させられそうだが……。
「セラ!」
セリアーナがこっちに来いと下から手招きをしている。
「お疲れ。もう一回行く? そろそろ小型の魔物はいなくなって来てるから上手くいくかわかんないよ」
セリアーナたちの下にやって来た俺は、向こうの群れの状況を彼女たちに伝えた。
見たところ、汗もかいてないし息も上がっていないから余裕はありそうだが……この二人だとちょっと決め手に欠くし、本気で戦わないといけないから一気に消耗してしまいそうではある。
「必要ないわ。残っているのはどうせオークあたりでしょう? 大した訓練にはならないでしょうし、さっさと倒してしまいましょう。フィオーラ、頼めるかしら?」
俺が言うまでもなく、セリアーナも自分たちのことはわかっているようで、フィオーラに任せるつもりらしい。
「ええ。私が全部やって構わないのよね? セラ、こちらに群れを引き寄せたら上に避けなさい」
俺はフィオーラの指示に「はいはい」と返事をすると、再び群れの下に飛んで行く。
「……流石にやる気になってるみたいか。コイツらを釣り出すのは無理だったね」
半分になった群れのすぐ側まで来た俺に、魔物たちが上を向いて威嚇の唸り声をあげている。
これはもうちょっとした切っ掛けで一斉に襲い掛かって来るだろう。
チラッと一度背後のフィオーラの様子を見ると、しっかりと魔力を溜めていていつでも魔法を撃てる状態だ。
「よし……!」
俺は群れを釣り出すために、突っ込んでいくと尻尾で前方を大きく左右に薙ぎ払った。
直撃はしないが、何体かに尻尾が掠ったことで威嚇から戦闘態勢に入ったようだ。
「来たっ! っとぉっ!?」
今まで奥に引っ込んでいたオークたちが、叫び声をあげながら揃って突進をしてきた。
俺は上に逃れると、一旦その勢いを殺すために尻尾で殴りつける。
そして、後続との速度を揃えさせた。
フィオーラがどんな風に仕留めるのかはわからないが、群れを一塊にしておいた方が仕留めやすいよな?
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




