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セリアーナ用のお風呂。
6畳くらいのお貴族様用にしては少々狭い風呂だが、浴槽とオイルマッサージとかエステ的な事をする木製の寝台が置かれている。
壁側には小さい棚が置かれ、石鹸とシャンプーと、謎のドロリとした液体が数種類……。
使っていいとは言われているが、石鹸とシャンプーだけしか使っていない。
そもそもあれが何なのかもわからなければ使い方もわからない。
うん。
俺には必要ないものだ。
さっさと体洗って温まろう。
手早く体を洗った後、湯につかることしばし。
「ふへー……」
浴槽の縁に後頭部を乗せ仰向けに浮きながら、手足を伸ばしちゃぷちゃぷと足を動かす。
浴槽が大きいという事もあるが、この風呂で思い切り手足を伸ばせるのは、この子供ボディの数少ない利点だと思う。
数少ない……他にあっただろうか?
これだけか?
ひょっとして……。
掘り下げるのは止めよう。
今更だけど空しくなってくる。
「む?」
ボーっと浸かっていると、脱衣所に人の気配を感じた。
覗き……な訳ないか。
「セラ?着替えを置いておくよ」
エレナだが……。
「ありがとう?」
「のぼせないようにね」
「はーい」
着替えってなんだろう?
自分で用意したものを置いていたはずだけど……気になる。
いつもより短いが風呂から出る事にするか。
「よいしょと」
気合を入れザバっと湯から出て脱衣所に向かった。
一体何を置いて行ったんだろう。
「……なるほど」
籠に鎮座するそれは一目でわかった。
念の為脱衣所内を探すが、俺が持って来た着替えは無い。
エレナが持って行ったんだろう。
部屋は目の前とは言え、流石に下着姿で出て行くわけにはいかないだろうし……仕方ない。
◇
「似合うじゃない」
「……」
部屋に戻ってきた俺を見てセリアーナはそう言った。
ちなみに、今の俺の恰好はワンピースタイプのパジャマ……いわゆるネグリジェで、透けたりはせず色っぽさは無いが実に女の子っぽい。
……これセリアーナの趣味だな!
「これは一体?」
さっき俺が出てくる前は資料やらを広げていた机には今服が積まれている。
そのうちの1枚を手に持って広げてみると、ワンピースだ。
腰で結ぶ帯の様な物はあるがそれ以外飾りっ気の無いし、外出用と言うよりは部屋着かな?
ただ、今着ているこれもだが、綿か何かだと思うが肌触りがいい素材で出来ている。
平民が着るような代物じゃない。
「今年の君の誕生日のプレゼントだよ。君がいつも着ている、ジンベイだったかな?この部屋だけならいいけれど、あれは屋敷内とはいえ少し肌が出過ぎているからね……」
「むぅ……」
作って1年経つけど、確かに袖が七分から五分くらいになっている。
俺ももう10歳だし、お嬢様的にあれははしたなかったか。
別の山の1枚を見てみると、そちらは今着ているのと同じようなネグリジェ。
他にも下着や、厚手の靴下までたくさんある。
「【緋蜂の針】を付けていると履きづらいかもしれないけれど、見ている方が寒々しいから、この時期はせめて屋敷の中で位は裸足は止めなさい」
と、セリアーナ。
「今日も寒かったからね……。外でも使わせてもらうよ。ありがとうね」
靴下、丁度欲しいと思っていたところだ。
服にしても楽そうだし、そのうち慣れるかな?
ありがたい。
「奥に置いておくから、後で一緒に見ようね。フィオーラ、髪をお願いします」
そう言うとエレナは服を持ち、隣の寝室へ向かっていった。
「セラ、来なさい」
フィオーラが自分の膝を叩いている。
基本的に俺の髪はエレナが乾かしているが、今日の様に風呂上りに彼女がいる時はエレナの代わりにやっている。
もちろん、お礼付きだ。
「ほっ!」
【ミラの祝福】を膝の上で発動した。
エレナの時もやっていたが、10分程度の短時間でもそれなりに効果はあるようで、気前良く引き受けてくれている。
髪を乾かすというただそれだけの事なのに、違いがあって面白い。
「それじゃ、今日の報告をお願い」
そして、セリアーナは空いた机に今度は別の資料を広げている。
この周辺の簡単な地図が書かれていて、工事の進捗と、ところどころに俺の所感が記されている。
一応ギルドからも上がって来るが、上から見ている俺の報告が一番正確らしい。
加えて、周辺の魔物等の動きも加えている為、リーゼルもこっちを採用しているとか。
今は半分を少し過ぎたところ。
大分進んできたな。
そんなことを考えながら、今日の報告を行った。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚