1767
その日の夜。
例によってテレサは忙しいようで不在だが、いつものメンバーでセリアーナの部屋に集まっていると、セリアーナが「あら?」と声を漏らした。
「どうかした?」
「本館からこちらに向かって歩いて来ている者がいるわね。使用人のようだけれど……」
セリアーナは首を傾げながらドアの方に顔を向ける。
今はもう部屋の使用人たちも下がっているから、彼女の加護のことを隠す必要も無いんだが……この様子だと今来ている者は普段見ている範囲の外にいる者っぽいな。
「見て来る?」
「いえ、そのままこちらに来るようだし、待ちましょう。リーゼルかしら……」
伝令がリーゼルからだとしたら、ダンジョンの件だったり予想は出来るが、それでも確実にこれだってのは思いつかないしな。
俺だけじゃなくて、他の三人もそうらしい。
不思議そうな表情のまま、ドアの方に視線を向けている。
そして、待つことしばし。
部屋のドアをノックする音が響いた。
「お、来たね。オレが行くね」
ソファーから立ち上がると、足元の【浮き玉】に乗っかって浮き上がりドアを開けに向かった。
「はいはいはい。今開けるよー……お?」
ドアの向こうに向かって声をかけながらドアを開けると、一人だけじゃなくて三人の使用人が立っている。
さらにその奥には兵士が一人……俺が見覚えのない顔だし、彼女が本館の使用人なんだろうが……何だってこんなにゾロゾロと……。
「夜分遅くに失礼します」
一体何事かと廊下の様子を窺っていると、使用人の一人が口を開いた。
「あ、うん。本館の人だよね? どうかしたの?」
「はい。こちらを旦那様から奥様に預かっております。返信は不要とのことですが……中に入らせてもらってもよろしいでしょうか?」
「ふぬ……」
俺がここで預かるんじゃなくて、彼女が直接渡したいか。
まぁ……領主直々に命じられたんじゃ最後までやり遂げたいよな。
一度部屋の中を振り返ると、今の話が聞こえていたのかどうかはわからないが、セリアーナはこちらを見て頷いている。
「うん……それじゃー入ってよ。あ、そっちもどうぞ」
俺は本館の使用人と兵の一人に部屋に入るように言ってセリアーナたちの下に戻って行くと、彼女たちも後をついてくる。
部屋に入りセリアーナの前まで来た使用人は、先程俺に行った時と同じように挨拶をすると、リーゼルからの手紙を差し出した。
セリアーナはそれを受け取ると、すぐに封を開ける。
「ご苦労様。下がっていいわ」
まだ中身を読んではいないんだろうが……とりあえず受け取ったって証明でもあるんだろう。
使用人もそれで十分なのか、頭を下げると。
「はい。それでは、失礼します」
そう言って下がって行った。
◇
ドアが閉まってしばらくして、俺は皆に向かって「ねぇ」と訊ねた。
「ウチの使用人たちってあんな感じだったっけ?」
「あんな感じ……というと、南館と本館の使用人のことかな?」
「そうそう。まぁ……一緒に仕事をする機会が少ないから、あんまり親しいわけじゃない……ってことは何となく知ってるけど……」
南館の警備を担当している女性兵も含めて、本館の使用人を同僚としては見ていない感じだった。
敵扱いなんてことはないんだが、少なくともいい関係だとは思えないよな。
首を傾げていると、セリアーナが手紙を読みながら口を開いた。
「……ウチで働く使用人は商業ギルドや騎士団の関係者がほとんどでしょう?」
中には貴族の縁者もいるらしいが、ほとんどがセリアーナが言ったような連中だ。
俺は「そうだね」と頷くと、セリアーナはこちらを見ずに続ける。
「北の拠点に派遣される商隊の件で、商業ギルド内部でも色々あるんでしょう。対立とまでは行かないけれど、お互いに警戒しているみたいね」
そう言って手紙に書かれた文章の初めの方を指した。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




