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「おおお……」
「載ってるよね。「赤鬼・アレクシオ」って」
「ああ……載っているな」
声に喜びを隠せないアレクの肩に乗り、彼が見ている物を俺も覗き込む。
冒険者目録。
その昨年度追加された項に、アレクが載っているのだ。
リーゼルが帰って来る前までには、と言いながらも結局帰ってこなかったアレクとジグハルトだが、リーゼルが帰還したその数日後に彼等も帰還した。
アレクは鉱山とその周辺の警備陣の指揮を執り、無事輸送体制を整える事に成功したようだ。
相変わらず色々できる奴だ。
一方ジグハルトは竜の痕跡こそ見つけたものの、本体に辿り着く事は出来なかったようで残念そうであった。
2人とも秋冬の間は近くの森にはいくものの、ルトルの街にいるようで、恐らくこのセリアーナの部屋に入り浸るだろうし、家は敷地内に既に用意されている。
最近顔を合わせる機会が無かったが、これからは増えるだろう。
アレクにとってこれに載る事は目標の一つでもあったようで、自分が載っているページに見入っている。
写真は無いが、結構似ている全身絵と解説付きだ。
存命中の二つ名持ちの冒険者の、名前や所属と専属の場合はその家と主だった依頼や討伐歴が載っていて、王都の冒険者ギルドで毎年発行されているそうだ。
何処の国でも共通らしい。
こちらは魔王目録よりは多少取り扱いは緩く、領都のギルド支部にも置いていて、申請すれば持ち出しは出来ないが、閲覧も出来る。
新規変更分のみを載せた版もあり、表紙や装丁を自作する事もある。
俺がもらったこれもそうだ。
「ジグさんとかも載っているね」
当たり前と言えばそうだが、ジグハルト、フィオーラ、ルバン達も載っている。
「ああ……10年位前からだったかな……毎年更新されているはずだぜ?それは」
こちらは魔王目録から目を離さないジグハルト。
貴族と関りが薄かったから、名前が売れていても中々許可が下りず、じっくり目を通した事が無かったそうだ。
どう倒すか考えているのか、時折言葉が漏れている。
俺は見てみたいとは思うが、戦いたい、倒したいとは思わないけれど……こう言うのがいるから持ち出し禁止になっているんだろうな。
「載ると何か変わった?」
「そうだな……貴族絡みの仕事が増えたな。後はダンジョンの申請や領地の移動手続きが随分早く済むようになったのは助かっているな」
……俺はそう言った手続きはセリアーナに全て任せてある。
「専属だったり貴族だったりすると恩恵は少ないかも知れないな。特にお前さんはお嬢様がいるしな……」
「目録は専属契約をしている場合は主が断る事も出来るし、仮に二つ名を得ても、貴方の場合はまだまだお嬢様が断るでしょう?」
フィオーラがジグハルトの言葉を継いで、言って来た。
彼女はジグハルトの隣に座り、採掘物の一覧表を見ながらあれこれ書き記している。
詳しくはわからないが、軽く教えてもらったところ、大掛かりな結界を張ったりする際の薬品だったり素材だったりを、領内だけで調達できるかどうかを調べているらしい。
しかし、これは載るのを断る事も出来るのか。
まぁ、聞いた感じ身分と実力をギルドが保証するような感じみたいだし、専属の場合は契約している貴族がそれの代わりをするし、必要は無いのかな?
「セラは当分載せる気は無いわ。載せて何か依頼の話が来ても受けようがないでしょう?」
「そりゃごもっとも……」
こちらの話を聞いていたセリアーナの言葉に思わず頷く俺。
わざわざ腕の立つ冒険者に依頼するような事だと、領内の魔王討伐だったり、何か難しい素材の採取。
あるいは、身辺警護や遠出の護衛……。
俺には向いていないのばかりだな。
セリアーナの方を見るとエレナと一緒に街の周辺地図と睨めっこをしている。
機材が届いていないとかでまだ着手していないが、この周辺の測量を行うらしい。
森の中にも入るから、アレクやジグハルトといった個人で強い戦力がいる間に進めたいんだろう。
それが始まったら、忙しくなるな!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚