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地下訓練所での戦闘訓練は二戦で終わりとなった。
とりあえずこの二戦でわかったことは、魔導士組の戦闘経験が足りなさすぎるってことだった。
エレナたちも、実はアレ以外のアドバイスをしていたようだが、実際に行動に反映できたのはあの戦い方一つだけで、それ以上は無理だったようだ。
まぁ……彼女たちは研究者だし、戦闘に不慣れなのはわかっていた。
エレナたちも、とりあえず一つは実行出来ていた点を評価していた。
ただ、女性兵たちの方は全員がそうというわけではないが、冒険者から転向した者が何人もいるからそれなりに動けていたものの……彼女たちも戦闘の素人と組んで動く経験はなかったようで、魔導士組のフォローまでは出来ていなかった。
冒険者なんてどこで活動していても、今回のように十何人もで行動する機会はないし、訓練でもそんな経験はなかったんだろう。
彼女たちが実戦に出る機会があるかどうかはわからないが……課題が明確になったことはいいことだ。
一先ず残りはもう数日だが、魔導士たちも雨季の間は地下訓練所に集まって、もう少し動けるようになるための訓練を行うつもりだと話していたし、エレナたちもそれに付き合うらしいから……多少は改善されるだろう。
ってことで、俺とセリアーナは一足先に地下訓練所を出て、セリアーナの部屋に向かっている。
兵たちは訓練所のシャワーを使うが、俺たちが使うのは昨日に引き続き自室の風呂だ。
俺は汗をかくほど動いているわけじゃないが……訓練所は砂埃が舞ったりもしていたし、いくら【風の衣】で防げているとはいえ、何となく埃っぽい気もする。
早く風呂に入ってサッパリしたいもんだ。
「今日もちゃんと準備とか出来てるかな?」
北館から本館に入った辺りで、すぐ隣を歩くセリアーナが口を開いた。
「私たちが下にいたのは昨日と同じくらいでしょう? それなら出来ているはずよ。……お前は私に付き合わないで下の浴室を利用してもよかったのよ? 待つのも大した時間じゃないでしょうしね」
「それこそ部屋に戻るのも大した時間じゃないよ……。部屋の方が慣れてるし、ゆっくり出来るよ」
俺の言葉にセリアーナは「そうね」と頷くと、周囲を見渡した。
本館のいくつかの会議室の前に待機している兵の姿があるが、それ以外の姿は見当たらない。
使用人たちの姿が見当たらないのは、本館の業務が開始したから表に出て来ていないってだけだろうが……昨日とはまたちょっと違う雰囲気になっている。
「何かあった?」とセリアーナに訊ねると、まだ先にいる兵を気にしているのか、セリアーナが小声で話し始めた。
「住民……恐らく商業ギルド関係者ね。後は普段屋敷にまでは来ない貴族が何人かいるわ」
「また微妙なところだね……ならあそこには護衛も混ざってるのかな?」
「全員の顔を知っているわけでもないし、見ただけじゃわからないわね……」
セリアーナはそう言って「ふう……」と溜め息を吐いた。
セリアーナが普段とは違う、運動用の恰好で屋敷の中を歩いていた……って情報は、実際は大したことじゃなくても、とりあえずの話の種にはなるだろう。
エレナやテレサが一緒なら彼女たちに連れ出されたとでも思うだろうが、今いるのは俺だけだからな。
主導したのはセリアーナだって考えるだろう。
……別にそれは間違ってはいないんだが、今の街の状況で余計な情報を増やすのは、後々面倒な手間が増えるだけになりかねないし、避けておいた方がいいだろう。
そうなると……。
「ふぬ……窓から上に行こうか」
俺はセリアーナに手を伸ばすと、彼女はすぐに頷いた。
「逃げるような真似をするのは癪だけれど、その方が面倒は避けられるわね」
【小玉】を受け取ったセリアーナは、いそいそと発動すると窓に手をかけた。
「まだこちらに気付いている様子はないし、さっさと出てしまいましょう。窓の鍵は……後で使用人に閉めさせたらいいわね」
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




