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「……⁉やあ、セリア。ただいま」
「……つまらないわね」
リーゼルの出迎えに玄関ホールで待っていたセリアーナは、その反応が不満の様だ。
まぁ、どうせ浮いているのなら、玄関から入ってすぐの所に逆さまになっている位したらきっと驚かせたと思うけれど、正面で堂々と浮いているのだから、俺の事を知っているのならそこまで驚きはしないだろう。
「まあいいわ……無事の帰還、何よりね。セラ」
「ほい」
セリアーナから【浮き玉】を受け取り、乗る。
うん、いつもの高さだ。
たまに自分の足で歩くとどうにも視線が低くていけない。
「色々荷物があるから、先にそちらから済ませよう」
「手伝いましょうか?」
「そうだね……ああ、いや。君宛の贈り物もあるから部屋で待っていてくれ」
「そう?わかったわ」
そんなやり取りの間にも屋敷の中に荷物が続々と運び込まれている。
降りて来る時に窓から見たが、馬車は4台だった。
行きは確か2台だったはずなんだけど……何を持って帰って来たんだろう?
◇
魔王目録と冒険者目録。
本来持ちだし禁止なのだが、その写しが今手元にある。
リーゼルから俺へのお土産だ。
魔王目録には今までに確認されたり討伐された名前持ちの魔王種の情報が記されている。
名前持ちとは、魔王種の中でも討伐隊を何度も退け、大体5年以上観測が続けられると名前が付くらしい。
領地にせよ国にせよそれだけの期間、足元にいる魔王を倒せないのは恥となるので、3年4年も経つとなりふり構わず戦力をかき集めてこれに当たるので、今では数年に1体程度と滅多に追加されることは無い。
それでもまだまだ生存中の個体がたくさん載っている。
古い記録も多いが、大陸の地図や歴史書と合わせて読むとそれだけでひと冬越せそうだ。
「レッド・オーガ」
500年以上前に大陸西部で大暴れしていた赤いオーガで、そいつ1体の為に国土を広げる事が出来なかったそうだが、帝国が総力を結集し討伐した……という事になっていたが、後に別の場所で大暴れしているのを目撃され、ただ単に移動しただけだったことが判明した。
魔王種は寿命という物が存在しない為、どこにいるかはわからないが今も生息している可能性が高く、この大陸最強の一角らしい。
帝国は別の個体だと言い張り、その存在はタブー扱いになっているとか。
アレクの二つ名「赤鬼」は帝国や西部を挑発する意味合いでもあるんだと思う。
この国はどんだけ西部の事を嫌っているんだろうか……?
「死沼」
陸クラゲという、俺は見た事は無いがスライムの様な魔物が存在する。
多分、クラゲみたいな姿をしているんだろう。
土中の死骸なんかを分解吸収するのだが、それが魔王化し、どんどん巨大化し果ては大陸北西部にあった沼全体にまで広がり、そこから更に巨大化していった。
近づいた生物は何でも飲み込まれ、丸ごと飲み込まれた村もあったらしい。
それを倒したのは後に「賢者の塔」を設立する錬金術師集団。
彼等はまず周辺全てを焼き払い、地上土中含めて全ての生物を殺しつくした上で、更にガンガン燃料を投下して沼全体を蒸発させるダイナミックな手法で止めを刺した。
そして、その跡地を自分達の本拠地にした。
土地全体がいわば魔王の遺骸の様な物で、きわめて強力な結界が張られている。
むしろその為に放置していたんじゃないかとか言われているそうだ。
そして「ラギュオラ」
ルゼル王国が文字通り死力を尽くして討伐した、竜種の魔王だ。
上の2体に比べネーミングセンスが異なるが、当時は発見者の名前を付ける事もあったらしく、初遭遇した時の調査隊隊長の名前らしい。
この3体は大陸全土で知られる超メジャー魔王だが、他にも色々な魔王の逸話がぎっしりだ。
これが持ち出し禁止なのは、居場所が載っている為、内容が広まって成り上がりを目指す平民の冒険者が勝てる見込みもないのに挑んで、下手に刺激し被害を出すことを警戒しているんだとか。
基本的に貴族学院の図書館や領主の屋敷にしか置いていないらしい。
そういえば俺もミュラー家の屋敷の図書室で入れてもらえない部屋があったが。
きっとそこにあったんだろう。
しかし……魔王かー。
魔境が存在するって事はこの辺にも魔王がわんさかいるんだろうな……。
俺は応援に専念して強い人に任せたい。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚