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まずは移動をしながら魔法を撃っていき、魔導士たちが慣れてきたところで次のステップに移った。
フィオーラが魔法で、彼女たちの足元に片足が軽く埋まる程度の穴が空いたり、逆に小石程度に地面を隆起させてつまずかせたり……タイミングやパターンがランダムの嫌がらせをしている。
ここや騎士団の訓練場は足場がちゃんと整地されているが、外だとそうはいかない。
街道ですら通行人や馬の足跡だったり馬車の轍が残っているし、街道から一歩離れたら、草が生えまくっていて足を取られるし滑るし……森にでも入ろうものなら慣れなければまともに歩くのだって大変だ。
基本的に人の手が入っていないしな。
普段から地面を歩くことがない俺だと、恐らくまともに歩けないレベルだ。
それを再現しているのかな?
「あっ!?」
横から聞こえてきたその声に、俺は回転しながら尻尾を伸ばす。
「おっとぉ?」
足元に空いた穴を躱しながら撃ったからなのか、俺から大分離れたところに飛んで行った魔法を慌てて尻尾で叩き割った。
威力は抑えめにしているから軽い衝撃がある程度だが、二発三発と続けば土壁を砕くくらいは出来るだろう。
通すわけにはいかないな!
「す……すみません……」
前に向き直った俺に、今の魔法を撃った魔導士が頭を下げた。
足元に気を付けながら走って、さらに俺めがけて魔法を撃つ……その慣れない運動が堪えているのか、大分息が上がっている。
「ふむ……」と頷いて、飛んでくる魔法を叩き割りながら他の魔導士たちの顔も眺めてみるが……。
「フィオさん、コレ続けて大丈夫なのかな? 結構限界が近そうだよ?」
今のメニューに変わってからまだそう時間は経っていないんだが、既に全員が額に汗を浮かべて息を切らしている。
このまま続けても、そのうち【風の衣】や【蛇の尾】の範囲外に撃ち込むことが増えるだけになりそうだし、一旦終了してもいいんじゃないかな?
そう提案すると、フィオーラは一度全員の顔を見ていき、「そうしましょうか……」と苦笑しながら頷いた。
◇
一旦訓練を中断した俺たちだが、今魔導士たちは訓練所の端で汗を拭いたり水分の補給をしていた。
いくら慣れないことを行ったからとはいえ、まだ開始してそれほど時間が経っているわけじゃないのに、
んで、フィオーラはその様子を眺めている。
何も言葉を発さないが、見た感じ概ね予想通りって表情を浮かべているし、別に不甲斐ないと考えている様子はない。
気になり「ねぇ」とフィオーラに小声で話しかけた。
「フィオさんから見て、今の状況はどんな感じなの? 予想通りって感じ?」
そう訊ねると「そうね……」と腰に手を当てた。
「もう少し動いて欲しいって気持ちはあるけれど、妨害付きで慣れない運動を行えば……まあ、こんなものよね。疲弊していても魔法自体は扱えているし、とりあえず最低限はクリアしているわ」
「そっか……。んで、この後はどんなことを考えているの? 休憩を終えたらまた今の続きをするのか、それとも何か別のをするのか……いっそ向こうと合流するのか……」
「先に貴女と直接戦ってもらいたいのよ。今はまだその【蛇の尾】で軽くあしらう程度でしょう?」
「魔法を弾いたり足を引っかける程度だね。戦うってことは……【猿の腕】とかも使うってことかな?」
「ええ。セリア様やエレナたちとは違うから、軽く触れる程度にして欲しいのだけれど……どうかしら?」
「魔法がメインになるんだろうし、今の威力程度なら全員を相手にしても大丈夫だよ」
流石に全力で魔法を撃たれたら、掠っただけでもバランスを崩してしまうだろうし、それを六人全員で……となれば、俺の方も加減をする余裕なんか無くなってしまう。
そうなったら、ただでさえ戦闘慣れしていない彼女たちじゃ大怪我は間違いないが……どうするのかとフィオーラを見ると、彼女は「もちろんよ」と頷いた。
今の低威力の魔法を相手にするってことか……それなら問題無しだな!
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




