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俺はセリアーナの周囲をゆっくり移動しながら、どう仕掛けたもんかと尻尾を揺らしていたんだが、セリアーナはその動きに合わせるように、切っ先を突き付けてくる。
隙を窺ってはいるんだが……中々どうして。
どうやっても防がれそうな気がするし、カウンターを食らってしまいそうな気もする。
「グルグル飛んでいないでさっさと仕掛けて来なさい」
俺が仕掛けてこないことにうんざりしたのか、セリアーナがそう言ってきた。
確かにこのままグルグル回っていても、彼女の訓練にはならないだろうし、もっともの言葉だ。
「む……わかった」
だが、そう答えたもののどうしたものか。
魔物が相手の場合は、【緋蜂の針】で突っ込んで行くってのが基本なだけに、それを使えないとなるとちょっと難しい。
「まぁ……いいか!」
魔物のように強力な一撃があるわけじゃないし、とりあえず適当にやってみるか。
俺は「ふっ!」と短く息を吐くと、【浮き玉】を加速しながら突っ込んでいく。
セリアーナはタイミングを合わせるように構えているが、切っ先に【風の衣】が触れる直前で急停止させると、セリアーナの背後に回り込むように尻尾を振り回した。
「……くっ!?」
セリアーナは視界から尻尾が消えたことで、下手にその場に踏みとどまって受けようとはせずに即座に横に跳んだ。
ゴブリンとかだと結構このフェイントは決まるんだが……流石に一緒にしたら悪いか。
とはいえ、少しではあるがセリアーナの体勢を崩すことに成功した。
「はっ!」
俺はセリアーナと距離を保ったまま尻尾で追撃をかけていくが……。
「厳しいか……」
セリアーナもわかっているからってのもあるが、どうにも攻め手が一つだけだと、こちらが有利な状況でも簡単に防がれてしまう。
「攻め方が甘かったわね。流石に尻尾だけじゃ無理よ」
今の数回でもう慣れてしまったのか、余裕の表情でセリアーナはそう言ってきた。
「魔物相手だと、【緋蜂の針】とか【影の剣】を使ってるんだけどね!」
そう言い返すと、もう一度突っ込んでいくが、セリアーナは無駄に動いたりせずに、俺がどう仕掛けてくるのかを見定めようとしている。
だが。
「っ!?」
先程までと違って、途中で停止したり進路を変更したりせずにそのまま突っ込んでいき、セリアーナの剣を【風の衣】で弾き飛ばした。
隙も作れたし、このまま風で軽く引っかけて……っ!?
俺は「おわっ!?」っと悲鳴を上げながら、【浮き玉】の軌道を上に曲げて、飛んでくる魔法を躱した。
壁に着弾した魔法は破裂音はしても土埃が舞うだけで、威力は大したことのない風の魔法だったようだ。
それでも、正面から直撃したら少しは軌道がズレていただろうし、セリアーナならその間に剣を拾って次の手に移っていただろう。
俺は「ふぅ……」と一息吐きながら、一旦距離をとってセリアーナを見ると、剣を拾いながら軽く右手をプラプラと振っていた。
今の一発が少しは効いたのかな?
「そういえば、その風は人間くらいなら弾き飛ばせたわね」
「速度も必要だけどね。手は痛めたりはしなかった?」
「軽く痺れただけで問題無いわ」
そう言って、セリアーナはまた剣の切っ先を俺に向けてくる。
あれくらいじゃ中断するつもりはないらしい。
それなら俺も付き合おう……と思ってはいるが。
「ちょっと待って! 【猿の腕】も使っていいかな?」
「好きにしなさい」
「ありがとう」
礼を言うと、俺は【猿の腕】を発動しながら木剣を取りに行く。
【蛇の尾】だけだともう対策をされてしまっているし、後は【風の衣】を発動し続けながら体当たりくらいしか、有効打になりそうな攻撃は出来ないだろう。
ただ、これはセリアーナの運動が目的であって決闘をしているわけじゃない。
ひたすら体当たりをし続ける俺を躱しながら、魔法で迎撃するってのは運動にもならないもんな。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




