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寝室から新たに持って来た恩恵品だが、【影の剣】や【緋蜂の針】のように危険な代物でもなければ、使用人たちに見られたところで別に困らないということもあって、ついでに発動しながらの動作チェックも行うことになっていた。
「はい」
セリアーナが手渡してきた恩恵品を「ほい」と受け取った俺は、まずソレを右腕に着けた。
渡された恩恵品は【猿の腕】で、発動すると右の二の腕から黒い影のような腕が生えてくる。
その腕を顔の前に持って来て、セリアーナたちにもよく見えるように軽く動かしてみせた。
「結構。もう少し細かい動きは出来るかしら?」
セリアーナの指示に「はいはい」と答えると、腕を伸ばして手を閉じたり開いたりを繰り返しながら、机の上のカップを持ち上げて口元に運ぶ。
「……ふぅ。動きもこんなもんだね。力も強いしオレの手よりも大きい分、こっちの方が使いやすいくらいかな?」
カップを机に戻しながらそう言うと、エレナも加わって、三人揃って何とも言えないような表情を浮かべた。
「まあ……動作に問題無いことはわかったし、外して貰って構わないわ……」
「はいはい」と返事をして【猿の腕】を解除してから外すと、セリアーナに手渡した。
セリアーナは受け取ると、箱に戻して次の恩恵品を取り出して磨き始めている。
そして。
「セラ、こっちもお願い」
今度はフィオーラに呼ばれて、また恩恵品を受け取った。
◇
さて、俺が普段使っている物からあまり使っていない物まで含めて、恩恵品の簡単な手入れとチェックが終わったんだが、あと一つ大物がこの部屋には残っていた。
テレサに貸し出している【赤の剣】だ。
【赤の剣】は少々大振り過ぎるし重たいこともあって、俺が扱うには不向きの恩恵品で、テレサに貸し出しているんだが、緊急時を除いたら彼女は基本的に持ち出すようなことはなく、この部屋の壁にかけたまま保管されている。
壁にかけている【赤の剣】を持って来るために壁の前まで移動すると、一緒について来たエレナが声をかけてきた。
「……大丈夫? 私も一緒に持とうか?」
「いや……だいじょう……ぶ!」
剣の鞘と柄を掴むと、両腕に力を入れて一気に持ち上げた。
持ち上げて抱え込んでさえしまえば、後は【浮き玉】で浮いて移動するだけだしどうとでもなる。
途中でふらついたりすることもなく机の前まで移動すると、机の上に【赤の剣】を置こうとしたが……。
「あらららら……」
抱え込むのと違って、持って動かすとなるとしっかりと重さを感じてしまい、バランスを崩しかけてしまった。
このままだと机の上に落としてしまいそうだったが、後ろから手が伸びてきたかと思うと、ヒョイと【赤の剣】を取り上げられた。
「おっと……ちょっと無理があったね」
エレナは【赤の剣】を机の上に置くと、振り向いて笑っている。
「ぬぬぬ……」
いつもは【祈り】を発動しながら、【猿の腕】と【蛇の尾】も使って持ち運んだりしていたから、素の筋力だとどうなるかの見通しがちょっと甘かったな。
「流石にコレは君には大きすぎるから仕方ないよ」
エレナが笑いながらそう言うと、俺が口を開くよりも先に、机の上の【赤の剣】を眺めていたセリアーナがこちらを見る。
「コレに関しては……私でも重たいと思うし、情けないとは言えないわね。テレサはちゃんと使えているのよね?」
「うん……多分。ただ……魔物相手に振るってるのは見たことあるけど、当たり前だけどオレが一緒の時って【祈り】も使ってるからね。何も無しだとどうなんだろうね?」
訓練所では【祈り】抜きで扱ったりもしていたが、動かない的と魔物相手だと勝手が違い過ぎる。
テレサ自身も訓練所には出入りしていても、街の外で魔物と戦う機会はあまり無いし……コレを実戦で使う機会って何気にほとんど無いと思うんだよな。
「まあ、夜にでも聞いてみればいいわね。セラ、支えるのを手伝って頂戴」
セリアーナはそう言うと、箱から【猿の腕】を取り出して、こちらに差し出した。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




