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まだ名前は決まっていないそうだが、新領地はルトルを要に東へ扇型に広げていく事になっている。
もちろん今も東に開拓を進めているがそれはあくまで中骨で、重要拠点は親骨に当たる部分でルトルから北東、南東方向に位置している。
特に南東の街はエリーシャがこの度降嫁されたサリオン家が治めるマーセナル領に繋がる大きな川が流れているとか。
上手くやれば他大陸と交流のあるサリオン家と交流が持てるそこはルバンが詰めていて、将来的には彼がそこの代官になる事だろう。
この国は大きく分けると、王から任命される大領地と、大領地同士の隙間を埋める小領地がある。
小領地は領主になるのに隣接する領主の承認があれば、たとえ平民であろうと領主の座に付ける。
ルバンの目指すのはそれなんだろうね。
そして北東の方は、何が掘れるかとかは聞いていないが有力な鉱山があり、治安や流通を安定させるために、あの後アレクとジグハルトが向かった。
ただ、ジグハルトに関してはあの辺に竜種の目撃情報があったからそれ目当てなんだと思う。
竜……俺も見たかった。
秋頃には戻って来ると言っていたし土産話に期待しよう。
「待たせたわね」
本日最後の客の応対を終えたセリアーナが後ろにいる俺に向かいそう言った。
朝から昼食をはさんで今までだしご苦労様だ。
さっきまで来ていたのは確か今アレク達が行っている街の商人だったはず。
なんか職人の誘致がどうのこうのとか言っていたけれど、精錬でもするんだろうか?
採掘だけしかやっていなかったところがそれ以外の事も出来るようになると、一気に規模が大きくなりそうだな……。
それはさておき。
「いいよー。取って来るね」
久々にガチャるぜ。
◇
この屋敷にも聖像はあるが、俺が所持している方を使うので【隠れ家】に入り、取って来た。
リーゼルがまだ姉の結婚式から戻って来ていないし、何かゲットしても彼には内緒にするんだろう。
……すれ違いが多いからあまり一緒にいるところは見ていないが、領都にいる時も仲は良かった。
彼自身やその周りの人間に問題は無くても、背後関係まではわからないし、そっちを警戒しているのかもしれないな。
「お待たせ!」
まぁ、なにはともあれガチャだ!
用意した聖貨は20枚。
2回分だな!
「久しぶり……と感じるけれど、そもそもお前ほど回数をこなせるのが異常なのよね……」
「そうですね。専業では無いとはいえ私もまだ1度しかやっていませんし……」
外野のお喋りを聞き流し、手の上にある10枚の聖貨に意識を集中する。
ダンジョンと外。
両方での戦闘を経験してやはり思った事は遠距離攻撃手段の必要性だ。
目潰しは有効だがあれは結局俺が接近して倒す必要がある。
もっと直接的な方法だ。
自力で身に付ければいいんだろうが、俺は自分のポテンシャルはあまり信じていない。
よし……やるぞ!
「ふんっ!ほっ!」
聖貨が消えるや否や即ストップだ。
テンポ良くいくぞ。
そして……【魔布】。
その言葉が浮かぶとともに、細長い丸太のような物が現れた。
「おっと……」
丸太と思ったそれは白い布を巻いた物だった。
「それは何?」
「魔布だって。素材かな?」
近づいて来たセリアーナに答える。
「そうね。魔糸で織った布ね。微弱だけれど魔力を分散させる力があるわ。要は魔法に強くなるのね。お前に上げたケープがあるでしょう?アレの裏地がそうね」
「ほーう」
表地は赤だけれど、裏地はグレーだった。
色は違うが、アレだったのか。
肌触りがいいとは思っていたが、良い物だったんだな……。
「それなら全部これで仕立てればもっと強力な物になるの?」
俺が使っている傘は純度100パーセントの魔鋼や魔糸をふんだんに使用している。
おかげで俺程度の魔法でもしっかり使い道が生まれた。
それならこれで仕立て上げれば魔法防御力が高くなる。
「儀式用の衣装に使われる事はあるけれど……どうかしらね。エレナ?」
そう思ったのだが、ちょっと違うのかもしれない。
「そうですね……。魔布はあまり強い布ではありませんから、やめた方が良いと思います。マントやケープに使っているのも実際は他の糸と合わせて織った物ですから……」
「ほほう……」
そういえば前世でスーツを仕立てた時にあまり質が良すぎる生地はデリケート過ぎて、使い方が難しいとか聞いたのを微かに覚えている。
それと似たようなものかもしれない。
外れかぁ……。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚