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「ねー」
俺はセリアーナの膝の上に頭を乗せながら、二人の作業を邪魔しないように見守っていたが……読書中のエレナは当然として、二人も黙りこくって作業を行っていたため、何もしていない俺だけがどうにも気まずくなってしまい、ついつい声をあげてしまった。
「どんな感じ? 少なくとも使っていて不具合を感じたりはしなかったけど……」
そう訊ねると、フィオーラが相変わらず顔を手元から上げずに答えた。
「いつも通り問題無いわね。汚れもほとんどないし……最近手入れでもしたのかしら?」
「昨晩外から戻って来た時に、眠くなるまでちょっとの時間だけど掃除をしたよ。汚れを落としただけで魔力の通りとかまでは見てないから、確認してもらえて助かるけど……」
「そう……手入れをしっかりしているのはいいことよ」
予想していたよりも汚れていなかったからなのか、どこか残念そうな声だ。
「……まだ奥に置いてるのだと手を付けてないのもあるし、そっちも持ってこようか?」
俺が寝室に置いていたのは街中でも身に着ける物だけで、本格的に戦闘に使う物は【隠れ家】に置いたままだったからこちらには持って来れていない。
どちらかというと、アッチの方が汚れていたり手入れが必要なはずだし……。
「どうしようか」と訊ねると、フィオーラは「そうしようかしら……」と呟いた。
「んじゃ、取ってくるね」
俺はソファーから起き上がると、【浮き玉】に乗って寝室に向かうことにした。
「あまり散らかさないのよ」
寝室のドアに手をかけたところで聞こえてきたセリアーナの声に、「はいはい」と答えながら中に入っていった。
◇
寝室から【隠れ家】に入った俺は、リビングの奥に設置している棚の前まで来ると、恩恵品を収納している箱を持ち上げた。
「他に見てもらうような物ってあったっけ……? ジャケットはもう研究所に送ってるし……これだけかな?」
フィオーラがやる気になっているし、他にも頼めるようなことはないかと部屋の中を見渡したが……俺は意外と魔道具関連の代物は持っていないんだよな。
解体用のナイフとか道具入れ用のポーチとかはあるが、そっちの手入れはテレサやアレクたちの方が得意だし……こんなもんかな?
「今あるポーチとかゴーグルも良い物だけれど……今度何か作ってもらうのもありかもね」
部屋の中を見ていると、ふとそんなことを思いついた。
守りは【風の衣】とオオカミのジャケットが。
索敵は【妖精の瞳】とアカメたちが。
収納に関しては、その気になれば【隠れ家】を発動してしまえば解決だ。
攻撃に関しては……まぁ、色々揃っているし、今の時点でも俺は概ねなんでも出来てしまう。
今すぐ必要になりそうな魔道具や魔物由来の道具ってのは思いつかないんだが、だからこそ相談する甲斐があるだろう。
セリアーナやフィオーラたちも暇ではないだろうが、ちょうどいい気分転換にもなるかもしれないしな。
◇
「お待たせー」
【隠れ家】から持ち出してきた箱を机の上に乗せた。
ゴトッと少々大きな音が出てしまったが、部屋の手前の壁前に控えている使用人たちにも聞こえたようで、少しではあるがこちらを覗きこむような動きを見せた。
【浮き玉】は彼女たちも見慣れているだろうが、他の恩恵品は発動している状態はもちろん、未発動の状態ですら俺が身に着けているところしか見れていない。
そんなんじゃじっくり見ることも出来ないし、気になるんだろう。
まぁ……手伝わせるわけにもいかないし、諦めてもらうしかないけどな!
「ご苦労様。開けるわよ」
「うん。とりあえず恩恵品だけ持って来たよ。オレの部屋には道具とか置いてるけど、そっちはどうする?」
セリアーナとフィオーラの顔を見ながらそう訊ねると、二人は揃って苦笑をしている。
「ただの気分転換で機能を見ているだけだし、そこまでしなくていいわ」
そう言いながら、箱から恩恵品をそれぞれ取り出した。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




