1705
「ただいまー」
「お帰りなさい。時間がかかったわね?」
部屋に入るとセリアーナが声をかけてきた。
俺が部屋を出ていた時は使用人たちと話をしていたが、今は彼女たちはいつもの場所に控えているし、話はもう終わったようだ。
「ちょっと旦那様のところにも寄ってたんだ。商業ギルドと商会の人間と、北街の顔役さんが北街の様子を聞きに来てたよ。まだ何組か来るかもしれないけど、旦那様がウチの兵だけじゃなくて街の各所にも通達しておくから、直に収まるだろうって」
「そう……リーゼルたちに任せておけばいいのね?」
「うんうん。アッチで片付けておくって言ってたよ」
そう言うと、セリアーナは「結構」と頷いて自分の下に来るようにと手招きをした。
「はいはい。どうかした?」
セリアーナの前に向かうと、彼女は無言でエレナがいるソファーを指した。
「……ん?」
ソファーの方を振り返ると、こちらを見ているエレナと目が合った。
「見に行かせたばかりで言うのもなんだけど、お前は今日は休養のために街に残っているのよ。そこで休んでおきなさい」
「……そういえばそうだったね。セリア様は?」
「溜まっている手紙の返事書きを進めておくわ。一応お前宛てのも溜まってきているけれど……どうする?」
セリアーナはそう言うと、机の引き出しを開けて何やら束を取り出した。
どうやらコレが俺宛の手紙らしい。
この時期は普段なら俺は屋敷でゴロゴロしているから、返事はテレサに任せるとしても、署名くらいは自分で書いていたんだが……今年は雨季に入る直前からずっと忙しいこともあってちょっとサボってしまっている。
テレサも忙しいから手紙の返事書きがどうなっているかわからないし……。
「セリア様の方にお任せします……」
セリアーナの仕事をサポートする文官はある程度揃っているし、そちらの力を借りてしまおう。
俺はそう言うと、逃げるようにエレナがいるソファーに飛んで行った。
◇
「失礼します。奥様、よろしいでしょうか?」
俺が部屋に戻って来てから三十分ほど経った頃、本館の使用人がセリアーナの下にやって来た。
「なにかしら?」
「こちらを。旦那様から預かりました」
そう言うと、手にした書簡を差し出した。
セリアーナは「リーゼルから?」と首を傾げながら書簡を開くと、中身を読み進めていく。
特に様子に変わりは無いし普通の伝言みたいだが……。
「エレナ」
俺は小声でエレナの名を呼ぶと、彼女も小声で返してきた。
「そうだね。範囲を狭めているみたいだよ」
「うん」
あの声色はフリではなくて本気っぽかったし、あの使用人がどこから指示を受けてきたのかを把握出来ていなかったんだろう。
普段は屋敷全体くらい加護の範囲に入れているだろうに……。
昨晩もそうだったが、目を覚ましてからも加護の範囲を狭めているようだ。
俺とエレナは互いに頷くと、セリアーナの様子を眺めていた。
そのセリアーナは俺たちに見られていることをわかっているのか、こちらに目を向けずに「エレナ」と呟いた。
「どうしました?」
「商業ギルドに加盟している商会主の奥方から面会申請よ。下で会うから貴女も付き合って頂戴」
「わかりました。面会予定の時刻はいつになりますか?」
「昼過ぎでいいわ。急な申請だし、それで構わないでしょう」
セリアーナはそう言うと、引き出しから紙を取り出して返事を書き始めた。
すぐに会わないあたり、向こうにとっては大したことでも、セリアーナにとってはそうじゃないんだろう。
……北街の件かな?
それなら直にわかるだろうし、少なくともセリアーナが急ぐようなことではない。
ただのお喋り程度になりそうだが……。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




