1702
セリアーナが街の様子を探るのを止めたところで、廊下に待機させていた使用人たちを部屋に戻って来させた。
もっとも、来客もないし彼女たちはいつもの位置で、大人しく待機させることになる……と思っていたんだが、珍しくセリアーナが自分の執務机の前に呼び寄せて、彼女たちと話をしている。
北街の様子についての聞き取りだな。
彼女たちは商業ギルド関係の者も多いし、直接的な質問はしていないが、それとなく聞きだしたりしている。
……普段セリアーナとは挨拶と簡単な指示くらいでしか言葉を交わさないだけに、使用人の彼女たちは急な展開に大分驚いているようだが……まぁ、セリアーナの気が済むまで付き合ってもらおう。
セリアーナたちを他所に、俺たちは二人でソファーに座りながらお茶を飲んでいたんだが……。
「おや?」
「外が騒がしくなったね。……揉め事かな?」
先程まで静かだった窓の外から、複数の男の声が聞こえてきた。
怒鳴り声とまではいかないが、何やら言い争いをしているようだが……玄関の方かな?
俺とエレナが「何事だろう」と窓の外に顔を向けていると、セリアーナたちもそう思ったんだろう。
使用人の一人が、外の様子を見に窓の方に歩いて行った。
窓が開いたことで、外の声もよりよく聞こえてくるが……まぁ、言い争っているな。
「なんだろうね?」
様子を見るために、俺も窓の方に向かう。
「あ、セラ様……」
「オレも見せてね」
使用人の肩に手を置いて支えにしながら窓の外に身を乗り出した。
玄関の方で馬車が何台か停まっているが……。
「何か見えて?」
「ちょっと待ってね……」
背後から聞こえてくるセリアーナの声にそう答えると、改めてじっと様子を眺めてみた。
「……何か言い争っているってことしかわからないね。アレはお客さん同士かな?」
距離があるから仕方が無いが、これだけじゃ何もわからないな……とさらに身を乗り出していると、一緒に窓の外を眺めている使用人が「あ」と声を上げた。
「どうかした?」
「ええ……あの馬車の一台は商業ギルドの物ですね。ですから、あの馬車と揉めるとなるとこの街の商会の者とは考えにくいです。他所の者でしょうか?」
まだ彼女の方は北街の状況を知らないからなのか、「何で他所の馬車が……」と不思議そうにしているが、彼女から「他所の」って言葉が出てきたことで、俺は何となく向こうで起きている事態が理解出来た。
「セリア様、ちょっと行ってこようか?」
エレナにも報告があったくらいだし、リーゼルももちろん事態を把握出来ているだろうけれど、警備兵や商業ギルドの連中がどうかまではわからないし……事態の収拾には俺が行った方が早いかもしれない。
振り返ってセリアーナを見ると、丁度こちらを見ていた彼女と目が合った。
「そうね。うるさいから静かにしてきて頂戴」
行っていいみたいだな。
俺は「了解!」と返事をすると、窓から外に飛び立った。
◇
南館にあるセリアーナの部屋から出て本館の玄関まで飛んで来たが、近付いたことで、部屋からだと見えなかったこちら側の様子が把握出来た。
馬車が四台停まっているが、それぞれの所属が違っている。
んで、その馬車に乗っていた者たちがどうやら中に入る順番を争っているようだ。
ウチの玄関前の警備兵は、いまいち状況が把握できておらず口を出しかねているな。
まぁ……商業ギルドに他所の人間に加えて、それらと同格っぽい二組となれば、身分は彼らより上だろうし、暴れているならともかく口論しているだけなら介入し辛いだろう。
もっとエスカレートしたら流石に黙らせるだろうが……もう俺が来ちゃったからな。
「お?」
言い争っている連中はまだ気づいていないが、警備の兵は空中から近付いている俺に気付いたらしい。
こちらを見て頷いている。
俺は彼らに頷き返すと。
「はい、そこまで!」
はっきり聞こえるように大きな声でそう言うと、警備の兵と彼らの間に割って入るように地上に降り立った。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




