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南館に入ってから警備の兵たちに挨拶をしながら廊下を進んでいると、右側のドアの一つがガチャっと開いた。
「……姫ですか?」
「うぉっ!? ……テレサか。起こしちゃったかな?」
部屋の中から顔を覗かせたのはテレサで、恰好を見るに就寝中だったようだ。
廊下の様子に気付いて起きて来たらしい。
テレサは廊下の様子を見ていたが、何も異常が無いのを確認すると、「どうかしたのか」と訊ねてきた。
ついでに、テレサは中で話すかと部屋の中を指すが、俺はそれを断りながら質問に答える。
「目が覚めちゃったから街に出て来たんだ。あんまり大したことはないけど、色々見てきたことを本部に報告してるから、朝にでも聞いておいてよ」
俺が街に出ていたことに驚いたようで、テレサは何度かパチパチと瞬きをしたが、すぐに「わかりました」と頷いた。
「姫はもうお部屋に戻られますか?」
「うん。眠くはないけど……起きてから結構時間が経ってるしね」
こちら側に来る前に、扉の前の兵たちと軽く話をしたところ、どうやらいつの間にか二時間程経っていた。
上空からの散歩に各所でのお喋り。
そして、騎士団本部での報告……と、確かに色々寄り道もしていたが思ったよりも長いことでていたらしい。
住み慣れた街ではあるが、見て回ろうと思えばまだまだ見る場所があるんだな……。
ともあれ、昼寝のせいで目が覚めた俺と違って、彼女は俺のせいで目を覚ましてしまったんだ。
俺は休みだが彼女のことだからきっと明日も朝から仕事をするだろうし、睡眠時間を奪っちゃいけないよな。
ここらで話は終わらせよう。
「それじゃ、起こしてごめんね」
「いえ、大丈夫とは思いますが、夜はまだ冷えますし体を冷やさないよう気を付けてください」
テレサの言葉に「はいはい」と返事をしながら、ドアの前から離れていった。
◇
「ただいまー……っと。まだ寝てるね?」
部屋に戻ってきた俺は、寝室の様子を壁越しに探ってみるが、セリアーナはまだベッドに横になっている。
テレサと違ってこちらはどうやら起こさずに済んでいるようだ。
もっとも、体調がベストの彼女ならいくら俺が起こさないように気を付けていても、加護で勝手に気付いて起きて来てもおかしくはない。
……ひょっとして今は加護を解除してるのかな?
よっぽど疲れてたのかもしれないな。
音を立てないように気を付けながら寝室のドアを開けると、天井に手を付けて【隠れ家】を発動した。
天井にドアが現れるとすぐに中に入り込む。
「ふぅ……」
一息つくと、部屋の中の明かりをパチパチと点けていきながら、リビングに置いてある時計を見た。
「四時前か。まだ朝って言えるほどじゃないね。もう少しこっちで時間を潰しておこうかな? モニターは……止めておいた方がいいか」
外の様子がわかるし、モニターは点けておいた方がいいんだろうが……セリアーナが寝ているしな。
長時間過ごす気もないし大丈夫だろう。
「それじゃー……何するかね? ジャケットはフィオーラに預けているし、ポーション類の在庫チェックも済んでいるし……。最近騎士団絡みの任務ばかりだったからバックアップがちゃんとして、今更オレが何かやるようなことって残ってないよな……」
そう呟きながら隠れ家の中を移動するが、どこもそれなりに片付いている。
忙しくてほとんど使ってなかったし、精々目立つところに荷物を置いておくくらいだったから、それも当たり前か。
「…………【影の剣】と【妖精の瞳】の手入れでもしておこうかね。他のは寝室に置いて来ちゃったけど……まぁ、二つなら手間もそんなにかからないし、丁度いい時間つぶしになるか」
手入れが必要な恩恵品は他にもあるが、そっちは結構酷使しているし、フィオーラ辺りに本格的な点検をお願いした方がいいだろう。
だが、使い慣れたこの二つなら今の俺でも十分だ。
「よし、それならさっさとやっちゃうか! まずは……っと」
俺は手入れの道具を取りに、物置用の部屋に向かった。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




