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俺の放った目潰しは上手く決まったようで、唐突なその光にオオカミ達の大半は足を止めていた。
「ほっ!」
立て直される前にまずはボスを叩くべく、傘を腰にさし混乱している群れを一気に飛び越え、そして蹴りを放った。
流石はボスというべきか、反応し大きく飛び退る事で回避したが、それじゃー追撃の【影の剣】は避けられないな!
座っていた【浮き玉】に左足を付けて立ち上がり、体を大きく伸ばし首を切り裂いた。
地面に対し平行で普通ならそのまま落ちてしまうが、【浮き玉】ならそれを起点に引力が発生しているから、こういったアクロバティックな体勢も可能だ。
さて、これでボスは倒した。
残りは9頭だが、まだ視界は元に戻っていない様で、その状態でさらにボスがやられて混乱具合に拍車がかかったようだ。
「ふっ!」
ここまで引っ掻き回すことが出来れば、大した事は無い。
1頭ずつ倒していくだけだ。
「たっ!」
【浮き玉】に座りなおし、蹴って切って偶に踏んでとバタバタしながら倒していくと、残り3頭という所で視界が戻ったようだ。
それぞれ2メートルほど距離を取りながら後ろに下がっていく。
突っ込んでもいいが、どうもああいう風に待たれると攻めづらい。
如何せん俺は防御力が豆腐だからな……。
「あっ⁉」
に……逃げよった……。
ダンジョンで戦闘場所の近くにいる群れが逃げる事はあったが、襲って来た側が途中で逃げるってのは無かった。
まぁ……ボスが最初にやられて勝ち目ないのにそのまま最後まで戦うって方がおかしいか。
「……どうしようかね……お?」
追うか放置するかで迷っていると左手に違和感を感じた。
最近戦闘をしていなかったから久しぶりの感触だ。
「ふふふ」
手を開くとそこには2枚の聖貨。
距離か時間かはわからないが戦闘は終了したらしい。
これの仕組みもいまだによくわからないが、1体毎ではなく1戦闘毎に判定があるのかもしれないな。
さて……改めてどうしようか。
さっきのゴブリンも含めて死体は9つ。
これが1つ2つなら放置していてもいいそうだが、集まり過ぎるとアンデッドが発生してしまう可能性が高くなるらしい。
【浮き玉】は片手で持てる重さ位しか追加できないし、かといって降りるのも怖い。
……ここは森に入ってから数百メートルの浅瀬だし、街まで行って誰か呼んで来るかな?
◇
「ありがとうございましたー!」
「おう!お嬢様によろしくな!」
4人組の冒険者達に礼を言って手をぶんぶん振りながら別れた。
戦闘を終えた後、街まで人を呼びに行こうかと思ったのだが、たまたま逃げ出したオオカミを見た彼らが不審に思い原因を調べにやって来たところ悩む俺を発見し、そこで死体を好きにしていいから処理を頼めないか?とお願いすると快く引き受けてくれた。
まだ査定は終わっていないが、多少倒し方が雑な分を差し引いても金貨1-2枚にはなるそうだし、リスクなしでその稼ぎってのは悪くないだろう。
ちなみに、冒険者ギルドまで運んだのだが、木の枝を何本か切り落とし簡易的なそりを作り、街まで数キロの距離を曳くというパワフルな手段だった。
「んじゃ、俺も帰るかね」
採取した薬草の代金は銀貨2枚。
冒険者稼業で生計を立てている人にとっては、専業にするには割に合わない仕事だ。
ポーション自体は素材があってちゃんと流通している分、あまり冒険者側も乗り気じゃないらしい。
そこら辺をもう少し考える必要があるかもしれないな。
とりあえず……。
あれこれ考えている間に、冒険者街を離れ中央広場の西側に到着していた。
あらっぽさが見え隠れする東側に比べて、この辺りは服、宝飾品にお茶お菓子と少しお高いお店が並んでいる。
今日はここにしよう。
「こんにちわー!」
「いらっしゃい。あら?確かお屋敷の子ね?」
「そうです。今日のお勧めはありますか?」
「そうねー……」
割と目立つ姿をしているからか、最近それなりに街の住民にも領都出身のセラちゃんとして知られてきた。
そろそろ街中を自由に動けるようになる頃かな?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚