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ゴブリン2体。
隠す気は無かったが、姿が見えなくても向こうも俺が気づいていることはわかっている様で、グギャグギャ鳴きながら徐々に近づいて来ている。
気を付ける事は何か?
まずは、通常のゴブリンよりもはるかに強力だという事。
攻撃力だけなら今まで魔物の攻撃が当たった事なんて無いし、気にしすぎなくていい。
問題は、スピード。
これが上がっているかどうかだ。
ダンジョンではマージンを1メートル程にしていたが……2、いや3メートルくらいとろうかな?
あれだな……魔物の群れに突っ込む感じで行けばいいのか。
よし。
【緋蜂の針】で蹴りを放って、そのまま横回転。
姿を隠す意味は無いし、いつも通りこれで行こう。
「……oh」
方針を決め、近づいて行ったのだが……。
野良犬と野犬の違いとでも言おうか……凄い形相だ。
目を剥き口の端からよだれを流しグギャグギャと……狂犬病かな?
体型はそう変わりないが、体に傷があったり、耳が千切れていたりと、中々タフな生活をして来たことが見て取れる。
ダンジョンのゴブリンや王都‐ゼルキス間で遭遇したゴブリンともまるで違う。
さらに気になるのは子供の腕位の太さの枝を持っている事だろうか。
よくよく考えると別に戦う必要も無いんだし、ちょっと逃げるのもいいかな?
とか考えてしまうが……。
「いや……戦おっわ⁉」
少し迷いが出たのがわかったのか、片方が手にした枝を投げつけてきた。
驚きはしたが、速度はそれ程でもない。
50センチほどの長さで回転しながら飛んでくるが、足で移動するのなら躱す動作で隙が生まれるが、俺には通じない。
「ほっ!」
ひょいと横にズレ、一気に接近。
蹴りを叩き込んだ。
そして、その体勢のまま即真上にエスケープ。
今まで体があった場所にもう1体が投げつけてきた枝が通過していった。
のんびりしていたら危なかったかもしれないな。
蹴りを入れた方はまだ息はあるが、ダメージは大きかったようで這いつくばったままで、もう1体も今武器を手放し素手になった。
後は止めだけだ!
◇
サクッと2体の頭を貫いたはいいが……核が無いって事は死体がそのまま残るって事だ。
どうしようか……。
「ん?」
処分に困っていると左脚に巻き付いていたアカメが何かを発見したようで、体を伸ばしている。
何事かと思い、そちらを見てみると……。
「……wow」
なんかさっきから変な驚きをし続けているな。
まぁ、それはいい。
こちらに向かってくる10頭くらいの……狼かな?
恐らくゴブリンの血の臭いに反応したんだろう。
一直線に向かって来ている。
強さは王都のダンジョン上層にいた狼と同程度だが速さはこちらが上かな?
ゴブリンと戦おうと決めた時周辺の警戒もしていたが姿は無かった。
俺の目が届く範囲は大体200メートル位だから、それより先にいたのか。
この速度ならもう10秒もかからないでぶつかるだろう。
ダンジョンなら充分なんだろうが、外ではこれでも足りないのか……。
グッドだ!
アカメ。
さて……逃げる事は可能かもしれないが、街までついて来られても困る。
「やるか!」
腰に下げた傘を抜き、構えを取った。
そして、魔法の準備に取り掛かる。
5メートルほど前に丁度いい木がある。
それを目印にしよう。
「ふぬぬぬぬ……!」
さっきのゴブリンも、効きはしなかったが投擲というダンジョンとは違う手段を使って来た。
1頭2頭ならともかくこの数相手だと何かあると対処できないし、ここは一気にやらせてもらおう。
【竜の肺】が無いと連発は出来ないが、10数体のオーガに比べて狼10頭。
一か所に固まって足を止めているわけじゃないし、まとめて全部に目潰しを決められるかはわからないが、それならそれでやり様がある。
2体のゴブリンでこれだけ来たんだし、戦闘中に大量のお代わりが来るかもしれないが……その時は逃げよう!
「来たな!」
狼にしてはサイズが大きい。
獣ではなく魔物か。
横に広がっていた群れが距離を詰める間に縦3列に並び変わり、そして最後尾に1頭いる。
多分そいつがボスだ。
その先頭の列が目印の木を越えたところで、俺は一気に上昇し……。
「ふらっしゅ!」
傘の先から魔法を放った。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚