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上空での周囲の警戒を切り上げて地上に降りると、徐々に小さくなっていく炎の中を見ながら周囲をグルっと回った。
まだ炎の中には魔物の形が残っているが、それは後で砕けばいいだろう。
「延焼したりはしてないね。……周りに燃えるような物が何も無いし当たり前か。ついでに、燃やす物もいつもより少ないから燃え尽きるのも早そうだね。まぁ……この天気も影響はあるのかな?」
上を見ると雨がドバドバ降っているし、移動中はあまり意識していなかったが、この草一本生えていない一帯を見ると水溜まりだらけになっている。
一の森の方が低いのか、そっちに向かって流れているからそこまで深くはないが相当な雨量だ。
むしろこの天候でもしっかり燃やすことが出来るってのは凄いことだよな。
と、燃焼玉の威力に感心していたが、ふと懸念が生まれた。
「……向こうに灰とか流れて行ってるよね? 今のところこの辺には魔物がいないから何も起きてないけど、あの灰が流れていくとそのうち魔物を集めちゃったりしないかな……」
ただの死体を焼いた灰に、魔物を引き付けるほどの力が残っているのかはわからないが、アレが原因で一の森の魔物が森から出てきたら大変だ。
俺は火の前から離れて一の森の方に向かうと、【緋蜂の針】と【蛇の尾】を発動する。
「ちょっと気乗りしないし、折角均してくれたのに申し訳ないけど……このままにしておくのはちょっと不安だよね。せー……のっ!!」
魔物の死体を処理した場所と一の森との間の地面を、適当な間隔でドカドカ蹴って穴を空けていく。
一度魔法で捲れ上がった場所だからなのか、一発の蹴りで空く穴の深さが普段よりもずっと深い。
【風の衣】が弾いてくれるとは思うが、水が流れ込んでいる場所に突っ込んで行くのは抵抗があるし、同じ個所を何度も蹴らずに済むのは助かるな。
気を良くした俺は、そのままテンポよくドンドン地面に穴を空けていった。
◇
「こんなもんかな?」
俺は振り返ると、上手いこと一直線に地面に穴が空いていた。
狙い通りそこに水が流れ込んでいて、一の森に流れ込んで行く灰を大分減らすことが出来ているはずだ。
ついでに、明日のジグハルトたちが一の森に入る位置の目印にもなるだろう。
「仕上げに……よいしょっ!」
穴の手前を尻尾で払いながら戻っていく。
これでさらに灰を散らばらせることが出来ただろう。
灰の密度を薄くしたら魔物の気配も薄まりそうだし、気やすめ程度かもしれないがやらないよりはマシだろう。
やって損するようなことでもないしな。
「よしよし……燃えてた火も消えてるし、後は燃え残った死体を蹴り砕いて……終わりかな」
処理していた場所に戻った俺は、燃え跡を尻尾で払っていく。
ただの炎じゃなくて、あの燃焼玉はフィオーラが作った魔道具だ。
普通の火より火力はずっと強く、今の短い時間でもしっかりと死体を焼いてくれていた。
骨までは無理だったみたいだが、それ以外はほとんど灰になって、雨水に流されている。
ここの灰も払い飛ばしながら、俺は焼け残った骨を踏み砕いて行く。
「よし……ここまでやればもう十分かな? 【ダンレムの糸】を使えばもっと綺麗に消し飛ばせるんだろうけれど……北の森の魔物相手にそこまでしなくてもいいよね」
俺は「うむうむ」と頷くと【浮き玉】の高度を上げていき、南に向かって再度出発した。
◇
さて、先程の戦闘以外は領都までの道中に問題は何も起きておらず、真っ直ぐ領都まで帰って来ることが出来た。
門は閉じたままで、その前に門番が二人立っている。
一の森にも北の森にも多少の魔物の姿はあったが、特に森の外に出てくるような様子は無かったし、門番の様子を見ても、この辺りは異常無しの例年通りってところだろう。
やはり気を付けるとしたらあの戦闘があった場所付近くらいか……と考えながら、門番たちの前に下りていく。
「ん? 副長か」
「北の拠点の帰りか……。門を開けるのは時間がかかるから、悪いが上から入ってくれ」
俺は彼らの言葉に「了解」と返すと、街壁を越えて街の中に入って行った。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




