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舗装はされているが少し造りが荒いようで、ガタゴト揺れながら坂を上り切ると、代官屋敷に到着した。
高台にある敷地はサッカーコート2面分位の広さで、屋敷と使用人宿舎らしき建物と……?
「あれ、何?」
他にあるとしたら兵舎か倉庫だろうけれど、兵舎にしては少し小さいし、倉庫にしてはデザインが違い過ぎる。
2階建てで一軒家と言うには少し狭く見えるが……メゾネットタイプと言うべきだろうか?
建設中のそれが3軒並んでいる。
奥の方にも資材を積んでいるのが見えるが、随分たくさんある。
数棟分どころじゃないけれど、……あれ全部使うのかな?
「まだ完成はしていないけれど、フィオーラが設計した専属の冒険者の住居ね。水回りや空調も魔道具で統一するそうよ。もっとも今使うのはフィオーラ達とアレクの2軒だけれどね。お前とエレナは屋敷よ」
「ほうほう」
そう言えば住居にこだわってるっぽい事を言っていたな。
……これか?
領都の屋敷は同じく高台にあったけれど、あそこはもっと広かったから色んな施設を纏めて建てる事が出来た。
ただ、ここは少し狭い。
そうなって来ると、兵舎を始め、場所を取る建物はある程度分散させる必要がある。
中腹に監視塔みたいなのもあるし、山城……とまではいかないけれど、ちょっと似ているかもしれないな。
「行きましょう」
屋敷の玄関前に着き、馬車が止まった。
外では既に出迎える準備が出来ている。
真ん中の偉そうな人が代官……じゃ無くて元代官か。
今のこの街の代官はリーゼルだ。
前任の彼はスライドして、そのまま補佐に付いている。
代官から代官補佐だと一見降格だけれど、公爵に内定している王族の補佐だ。
聞いた感じ手柄に焦るタイプじゃなさそうだし、上手くやっていけるかな?
◇
増築をした代官屋敷は、今はT字を横にした形になっている。
リーゼルの部屋が横の端で、セリアーナは縦の端だ。
そういえばこの世界って夫婦の寝室は別ってのが常識なんだろうか?
元の世界の貴族生活は知らないが、親父さん達もじーさん達も部屋は別だった。
「どうしたの?」
天井を叩く音が消えた事で、手を止めている事に気付いたのか机に向かっているセリアーナが、顔を上げずに口を開いた。
「ん?いや……ここは2部屋なんだなって」
直接聞くわけにもいかないから、適当に思いついた事で言い逃れた。
「そうね。今の段階で3部屋も取る訳にはいかないでしょう?今も作業を続けているけれど反対側にもう1棟建てるから、それが完成したら可能でしょうね……。別に私はこれでも構わないわ。応接用に別の部屋を用意してあるしね」
「なるほど……」
資材が大量にあると思ったが、まだこの本館も未完成だったのか。
今がT字って事は完成形はH字かな?
「エレナは向かいの部屋だけれど、お前はここでいいわね?」
「うん。……そう言えばアレクはどうするの?」
屋敷に着いて食事を済ませるとどこかへ出かけて、もう日が暮れているのにまだ帰ってこない。
外にある住居棟もまだ建築中だ。
ここに泊まるのかな?
「フィオーラ達を始め冒険者達が借り切っている宿があるの。そこに泊まるそうよ。ルバン達は自分達だけで使う宿を押さえてあるそうね」
「へー……」
冒険者が集まる宿か……。
王都でジグハルトの泊まっていた宿には行った事があったが、あそこはちょっと例外として……少し興味があるな。
王都でも領都でも俺は他の冒険者とギルド以外で接する事はほとんど無かったからな。
揉め事になったら俺も相手も困るし、王都も領都もいわば腰掛だったが、この街は今後俺のホームタウンになるし、ダンジョン以外での冒険者としての活動もする。
顔を繋ぐ意味はある。
「今日は駄目よ」
「ぉぅ……」
俺、そんなにわかりやすいんだろうか?
「お前にも仕事を頼むし、そのうち顔を合わせる機会はあるわ」
「はーい」
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚