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いざアレクたち躊躇組が足を速めると、包囲が完成するのはすぐだった。
魔物たちに抵抗は無く、ついでに包囲から逃げ出すような動きも見せずに、ただ包囲に追われるように真ん中に集まっていっていた。
指示役だった魔物は平均より大きい体をしているコボルトだったが、ソイツも特に何をするでもなく、一緒に真ん中に集まっている。
上から見ていて怪しい動きも無ければ周りに援軍がいるようなこともないし……一気に決めにかかるには絶好の機会なんだが……。
アレクたちに「包囲が遅れている!」とか偉そうに言ったにもかかわらず、当の俺が躊躇うのもなんだが、コレはちょっとどうしたらいいかわからないな……。
「アレク! 周りに新手はいないし、このまま倒しちゃう? 群れの中に指示役のコボルトも一緒にいるよ!」
「頼む! お前が突っ込んだら俺たちも合わせる!」
上から地上の様子を伝えると、アレクが即そう返してきた。
俺も「りょーかい!」と即答すると、地上の魔物たちから目を離さずに、その真上にゆっくり移動していく。
魔物たちも何体かは上空を移動している俺に視線を向けてはいるが、指示役が周囲の兵にしか意識が向いていないようで、俺には気付いていない。
「最初のオレの突撃への対処とか、こっちで迎え撃った時の立て直しとか……機転が利いたし結構有能だと思ったんだけど、そんなことなかったかな?」
強さを見た感じ魔境の魔物ってわけじゃなさそうだし、やっぱりこの辺の魔物相応の知恵しかないんだろうか?
包囲を狭め始めた時に比べたら何か指示を出しているようだし、少しはマシになっているようだが、コイツはなんなんだろうな?
俺は「ふぅ」と一息吐くと、ギャーギャー叫びながら大きく腕を振るっているコボルトを睨んだ。
まぁ……どうせ仕留めるんだし、考え込むだけ無駄かな。
「よし……それじゃー、行くぞーっ!」
左足を伸ばすと、指示役のコボルト目がけて一直線に急降下する。
「お? でも遅い!」
上空で叫んだからかようやく俺の存在に気付いたらしい。
視線を上に向けたかと思うと、慌てて何か指示を飛ばしているが、俺の突撃に合わせて既にアレクたちも動いている。
周囲の魔物の大半はそちらに気を取られているし、急な指示に反応が間に合わず……。
「ほっ!」
俺の蹴りが地面に突き刺さった。
コボルトは何とか直撃を躱すことは出来たが、コイツとついでに指示に反応出来て集まって来た魔物数体も、揃って蹴りで砕けた地面の破片が直撃して、吹き飛んでいる。
「よし……コイツからだ!」
俺は起き上がろうとしている指示役のコボルトを狙って、尻尾を振り回して追撃を加えた。
瓦礫だけならまだ耐えれたが、さらなる追撃に耐えきれずに地面に倒れこむ。
その隙だらけの姿を逃すわけはなく。
「よいしょーっ!!」
急加速して接近すると、胴体目掛けて【影の剣】を振り抜いて真っ二つにした。
結局このコボルトが強いのか弱いのか賢いのかそうでないのか……何もわからないままだったが、厄介な存在なのは確かだったし、ソイツを仕留められたのは大きいだろう。
「指示役仕留めたよ!」
俺の声に周囲から歓声が上がった。
皆もコイツのことを厄介な相手だと思っていたみたいで、ソイツがいなくなったことで、まだ包囲の中に魔物と一緒にいる俺でもわかるくらい、戦い方が思い切りよくなっている。
逃がさないように距離を保ちながら牽制を入れていく程度だった兵たちが、包囲の中に踏み込んで魔物に攻撃を加えていっていた。
「せっかく止め役を任されてるのに、オレの出番が……!」
一体二体と倒れていく魔物を見て、俺も置いてきぼりにされないように、急いで戦闘の輪に飛び込んで行った。
◇
「はっ!」
順調に魔物の数を減らしていき、今最後の一体の首を刎ねとばした。
確認するまでもなく死んでいるだろう。
「とりあえずこれで目に付く範囲の魔物は倒したけれど……うん?」
まだどこかに潜んでいるかもしれないしな……と周囲の様子を探ろうとしたが……右手に慣れた違和感を感じたことで、戦闘が終わったことを理解した。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・10枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




