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レフの街の代官屋敷。
そこの客室にいる。
どの街でもほぼ同じ造りなのが面白い。
領主の屋敷だったり王都圏の街だと色々違いがあったけれど、この辺だと個性を出すほどの余裕が無いのかもしれないな。
空調もついていないし、むしろ馬車の方が上かも知れない。
既に夜になり、セリアーナ達はこの街の代官と何やら話し合いを、俺は部屋でお留守番だ。
もっともただの留守番ではなく、部屋の天井や壁の確認をしている。
板の一枚一枚をコンコン叩く徹底ぶりだ。
セリアーナは、生物相手ならとにかく鉄壁に近いが、事故はどうにもできない。
その為、宿泊先では警備体制よりも、防災を重視している。
……しているのか?
手抜きはしないけれど、専門家でもない俺に任せるあたりどうなんだろうか?
まぁ、他人から見たら重視しているように見えるかもしれないな。
リーゼル達は会食後しばらくして、領都目指して出発した。
施療にも満足したようで、必要ないと言ったのだが土産を用意すると言っていた。
王子様のプレゼントか……ちょっと期待しちゃうな。
うへへ……と妄想を広げていると、ノックすること無く部屋のドアが開いた。
「あ、おかえりー」
話し合いを終えたのか、セリアーナとエレナの2人が部屋に戻って来た。
「ええ、ただいま。部屋はどう?」
上に羽織った長袖をエレナに渡しながら近づいてくる。
あまり肌を見せるのは良くないとはいえ、もう夏間近なのに、大変だ。
「ネズミ一匹いないね。破損している所も無いし、管理はしっかりしているんじゃないかな?」
「結構。【隠れ家】を出して頂戴」
「ほい」
◇
【隠れ家】内部。
馬車での移動中こそ使っていなかったが、宿泊先では相変わらずこの中にいる。
一応客室の中でもグレードの高い部屋なのだろうが、まぁ……うん。
【隠れ家】の方が快適さも安全度もずっと上だ。
一応一人用の部屋ではあるが使用人が控える間もあり、俺とエレナが一緒にいてもそこまで怪しまれない。
セリアーナが自分で起きるから、呼びに来る必要は無いと言ってあるし、流石に部屋に踏み込んでくるような無礼者はいないだろうし、バレることは無いだろう。
アレクは他の騎士達同様にこの屋敷に隣接する兵舎に泊まっている。
もうしばらく不便に耐えてもらおう。
「全く……」
ため息をつきながらセリアーナは彼女の指定席となっているソファーに、ドサッと座り込んだ。
何やらお疲れの様子。
「どうしたの?」
エレナはキッチンにいるし、俺が聞くしかないか。
「ここの息子達を売り込まれたわ」
……。
「えーと……?部下でって事?」
流石に男妾って話じゃ無いよな?
今日リーゼル来てたし、結婚するって事はわかっているんだよな?
「そうね。ここの先のソールの街から新領地に組み込まれるでしょう?そうなるとこの街は領内の中継点から、領境の街になるわ。街の役割そのものが変わるの。ここの代官は文官肌の人間だから、騎士団には通じていないのよ」
なるほど……。
親子関係にあるとはいえ、他領になる以上検問をしっかり設ける必要がある。
まして開拓も進めるから人の出入りも多いし、中には荒っぽい者もいる。
そして、不審者も。
ところが、今の代官じゃその力が足りないかもしれない。
そりゃ大変だ。
「代わるの?」
「ええ。お父様からの辞令を私が運んできたの。もっとも領都に戻れるのだし悪い話ではないのだけれど……、彼はもう頭打ち。それを察したんでしょうね」
頭打ちという割には、指で首を切るような仕草をしているのがちょっと怖い。
「息子達にしてもね……、ルトルは今も人が足りていないのだし、その気ならグズグズしていないでさっさと行っていれば、リーゼルが使っていたのでしょうに……」
「ははぁ……」
1年ちょっとの付き合いだけど、セリアーナは(わりと)即決するタイプだけれど、エレナしかりアレクしかり、周りには慎重なタイプを置きたがる。
もちろん考えなしに突っ走るのは駄目だが、今回の事は辞令こそ急ではあるけれど、この事態を全く予期せず、そしていざとなったらバタバタした事がお気に召さなかったらしい。
てことで、彼の出世レースはここまでなのか。
厳しいとは思うけれど、ここをしっかり治めてくれないと俺も困るしな!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




