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「久しぶりだね。セリア」
レフの街の代官屋敷に到着し中に入ると、リーゼルが笑顔で出迎えてくれた。
街に入った時点で衛兵が、到着を伝えに行っていたんだろうけれど、わざわざ彼も待っていたんだろうか?
「ええ……久しぶりね」
セリアーナはやや呆れてはいるが、あまり驚いた様子は無い。
まぁ、この人に隠れて何かするってのは難しいよね。
「おや残念。驚かす事は出来なかったか」
そう言いクスクス笑っている。
悪役っぽい笑い方をするセリアーナに比べて、相変わらず爽やかなにーちゃんだ。
いや、逆にこういう奴こそ実は黒幕ってオチが……。
「さて、食堂に案内しよう。君達も昼食はまだだろう?」
「そうね。貴方も移動があるしあまり時間は無いものね。案内して頂戴」
そのままセリアーナはリーゼルに手を引かれスタスタと歩いて行った。
俺達はどうしたら……?
「皆もこちらに」
そう思っていると、リーゼルの執事、カロスが口を開いた。
普段は気安い関係だが、何だかんだで主人と従者、使用人関係で、外だとそう言った接し方をしているが、今回は違うみたいだ。
◇
「それで、ルトルはどういう状況なの?アレクから簡単に報告は受けているけれど、貴方からも聞きたいわ」
昼食を終え、領都やここまで互いに通過した街の事を話し、いよいよ本命のルトルだ。
アレクも街の様子は調べていたが、数か月前に冒険者としての仕事もしながらだったから、どうしても情報量は少なかった。
「やはり教会勢力が強かったね。前任の代官も街を混乱させないように街の治安を優先していたから仕方が無かったのかもしれないけれど……街の有力者も教会と関りの多い者がほとんどだった。無理やり切り込んでもいいがそれだと反発を招きそうだからね。手ぬるいと思うかもしれないけれど、ま、徐々にね」
ほうほう。
手ぬるいとは思わないけれど、気が長いというか悠長だなとは思うね。
「彼等も今まであまり領主という存在を意識してこなかったんだろう。足場はしっかり固めたいし、急ぐことは無いさ」
「冒険者はどうなの?」
「聖貨の換金や治療院を利用する者はいるが、冒険者はこちら側だね。ルトル出身の者が少ないというのもあるが、アレクシオの連れてきた者達が良くやってくれているよ」
セリアーナの問いに答えるリーゼル。
冒険者は領主側か。
まぁ、アレクがスカウトしたのは王都だし、あそこのダンジョンでの活動を捨ててまでわざわざ来たんだ。
そりゃー、頑張るか。
それにあの街出身で冒険者を目指す者は、はみ出し者というか、どちらかと言うと街に不満のあるものが多かったし、体制が変わるならそっちに付くのかもしれないな。
「あら、良かったじゃない」
「ああ。これだけ領都から離れていると冒険者が街の防衛の中心だからね。場合によっては住民側に負担を強いてでも彼等を優遇しようと思っていたが、その必要は無かったね。ジグハルト達の存在も大きかった。彼らがいたからこそっていうのもあるだろうね」
「そう言えばジグハルト達はどうしているの?間に合うようなら一度戻って来るとは聞いたけれど、結局そのままよね?」
アレク達と一緒に行った、ジグハルト。
そのまま行ったきりなんだよな。
あの街そんなに楽しいのかな?
「ジグハルトは街の外を色々調査していたよ。途中からルバンが加わってより広範囲を行っていたからね。フィオーラは最初はそちらに参加していたが、今は住居をどうするかで色々動いていたよ」
「……そう」
マイペースな人達だ……。
「当面僕等はルトルの代官屋敷を使う。伯爵が婚約が確定した時点で増築を進めてくれていたから既に工事も済んでいるし、周辺の土地も徴収して敷地を拡大してあるから、兵舎や使用人棟も用意できている。エレナ達もその辺は心配しないでくれ」
代官屋敷かー……。
街の南の方にあったのは知っているけれど、近づいた事すらないな。
「セラ君はどうしようか……。使用人棟にするかい?それとも屋敷に住むか……」
自身の膝の上に座る俺に対し聞いて来た。
俺は個室でさえあればどっちでもいいけれど……。
「セラは今と同じように私の部屋に用意させるわ。そのくらいの広さはあるでしょう?」
「あまり無理をさせてはいけないよ?」
【ミラの祝福】と【祈り】の効果を体験中のリーゼルが軽くセリアーナを窘めるが、彼女の目的はちょっと違う。
【隠れ家】の方だな!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚