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このまま隊の他のメンバーとの合流を目指す兵たちと別れて、一の森に入った俺は、森に潜んでいるオオカミたちの下に真っ直ぐ向かうのではなくて、まずは南東方向に進んでいた。
包囲の南側に向かった際に、魔物に動きを悟られないように北の森を移動したのと同じ理由だ。
北の森を移動した時よりは大分移動距離も増えてしまうが……森の上空を移動しているし、速度も森の中に比べるとずっと出せるから、裏に回り込むまでそう時間はかからないだろう。
「……っと? アレかな?」
今いる位置から北側に二つの強い魔物の気配を見つけた。
一つが森の浅瀬から少し奥に入った位置で、もう一つがそこから数十メートルほど後ろに離れた位置に控えている。
さらに、ここからだとどれくらいズレているかはわからないが、前後で真っ直ぐ並んでいるわけじゃないし、ジグハルトの魔法で一撃で纏めて倒す……ってのは無理な配置だ。
ジグハルトが随分と森の奥からコイツらを引っ張り出すことにこだわっていたが、その気になればいつでも魔法で纏めて仕留めることが出来る。
やらないのは、森を破壊し過ぎないような配慮……とか思ってたんだけど、違ったみたいだな。
「とは言え……本気でなりふり構わずやろうと思えば出来るはずだし、それも間違いってわけじゃないだろうけど、そこまでする程かどうかで迷って……我慢比べを選択したってことかな? まぁ……近くに魔物もいるし、そんな派手なことをやったらその二体だけを倒せば終わりってわけにはいかないしね」
俺は森の様子を眺めながら「はぁ……」と、溜め息を吐いた。
見た感じ同じ群れってわけじゃないだろうが、少しずつ森の外に向かっていっているし、何かきっかけがあればこの魔物たちも暴れそうだ。
「追い払うのが目的じゃないとはいえ、あれだけの魔力を浴びせられてるのに逃げないんだよね……。北の森の方はすっかりいなくなってたんだけど……オレが間に入るだけでどうにかなるかな?」
並の魔物が相手なら、俺が前に立ちふさがったら多少の足止めくらいにはなるんだが、ちょっとコイツら相手だとどうだろうな。
「まぁ……オレが優先することはボス格を逃がさないことだし、周りの魔物たちも抑えられるんならそれが一番だけど、無理なら無理でもなんとかなるか」
数が多いから厄介なことには違いないけれど、俺がこっち側からボスが逃げないように抑え込んでいるのなら、ジグハルトが戦闘に参加出来るしどうにでもなるだろう。
俺は「よし!」と気合いを入れ直すと、奥にいる方のボスの背後に回り込むように【浮き玉】を飛ばした。
◇
裏に回り込んだところで、俺は一旦【浮き玉】を停止させた。
一応遠回りをしてはいるものの、これだけ用心深い魔物だし俺の動きにも気づくんじゃないか……と不安だったんだが、ジグハルトの魔力はこの辺りにもしっかりと届いていて、その魔力に上手く紛れることが出来ているのか、全く気付いた様子は無かった。
「合図は……必要ないか」
この高度なら木に遮られることもないし、ジグハルトに向けて魔法で合図をしてもよかったんだが、折角魔物に気付かれることなく背後を取れたんだ。
ここは余計なことはせずに、コソコソと動こう。
俺がこっちに移動するってのは兵たちに聞いているだろうし、魔力でも動きを捉えられているはずだしな。
念のため恩恵品と加護は必要な物だけを残して解除してから地上に降りていく。
「……ん? これなら足止めだけじゃなくて、上手く行けば仕留められるんじゃないかな?」
辺りの様子を窺いながら降下をしていたが、俺と後ろのボスとの間には何もいないらしいことに気付いた。
そして、ボスたちも周りにいる魔物たちも、ジグハルトの魔力にしか意識が向いておらず俺は全くのフリーだった。
このまま音を立てずに静かに近づいて行けば……やれるんじゃないか?
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




