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「ふーむ……」
どうしたもんだか……。
「どうしたの?」
座り心地の悪さに思わず俺の漏らした声がミネアさんの耳に届いたようだ。
「いや……座りにくいなと思って……」
ジグハルトは胸筋があるものの基本的に平らだから座りやすかったけれど、フローラは巨と普通サイズの間位の胸があるから、どうにも座る位置がしっくり来ない。
鳩尾あたりに座ればその問題が解決するが、それだと顔に手が上手く届かない。
それに胸元には効果が及ばないかもしれない。
今のこの体勢だと一応発動している手応えはあるけれど、どうにも気が散る。
そもそも本来はもっと時間をかけてやるものなのに、1時間で済まそうってのがイレギュラーだ。
そこまで気にする必要はないのかもしれないが、何かしらの改良を検討せねば……。
スキルの性能は今ので十分だと思うが、手法にはその余地がありそうなんだよな。
女性相手にこのやり方は駄目だ。
「アノ人の時はどんな風にしていたの?」
「っ⁉」
スキルの事を考えていると、いつの間にか窓際の席にかけていたミネアさんがすぐ側まで来ていた。
叫びそうになったぞ……。
アノ人……親父さんの事か。
「うつ伏せになって貰って、腰に乗ってました。腰痛いって言ってたから……」
ついでに頭に手を添えていたね。
まぁ、それは言わないけれど。
「頭は?」
……親父さんバレてない?
◇
今まで親父さんは明るい所だとあまり2人に近づいたりはしなかったらしい。
自分から近づくことは無いし、近づくとさりげなく距離を取っていた。
ところが1週間程前からそれが変わった。
決して不快なことでは無いけれど、結婚当初からそうだったのにここ最近の急な変化を訝しみ、フローラと共に少し調べると、一月ほど前に俺が部屋に呼ばれていたことが分かった。
俺が変化をもたらせる事なんて【ミラの祝福】位だし、それで予測を付けたんだろう。
様子見する事一ヵ月。
髪の毛も1センチくらい伸びてこれはいけるなって思い、後数ヶ月もすれば髪を短くしたという事にして、カツラを外せると判断したんだろう。
「なるほどね……」
ちょっと油断があったかもしれないが、気づいた方が凄い事にしておこう。
ドンマイ!
「リックは若い頃からずっと領地の仕事で悩み続けていたからって言ってたね」
俺も話しているけれど、悪くないよな?
親父さんのミスからバレているんだし……。
まぁ、ジーナとフローラ付きの侍女もいるけれど……。
「王都の大旦那様はふさふさだったし、今なら領主の仕事も慣れているんでしょう?それならもう大丈夫なんじゃ無いかな?まぁ……新領地の事とかでいろいろあるかもしれないけれど」
若い頃はじーさんに振り回されていたそうだけれど、今なら自分主導で動いて行けるだろうし、そんなにストレスはかからないはずだ。
自分じゃ試しようがない事だから断言はできないが、すぐ抜けるって事は無いだろう。
「……む?終わったね」
親父さんネタで1時間使ってしまった……。
俺としてもわざわざばらす気は無いんだけどな。
「フローラ様、お手を……」
上から降りると鏡を持って来た侍女が手を取り起こしている。
「どうです?」
手応えはあるけれど、元々フローラとは交流は無いし、ちょっとどれくらい変化があったかはわからない。
まぁ、悪くはなっていないって事だけは言えるけれど……。
「ええ……見事です。ミネア様が仰っていた通りですね」
侍女と鏡を見たフローラは満足げだ。
……俺にはわからない所で変化があったんだろう。
太った人とか高齢の人なら俺でもすぐわかるんだけど……難しいね。
気付けばミネアさんも混ざって盛り上がっている。
侍女と違い割と不躾に顔や髪を見ている。
「まだウチにいる間にもう一度私もお願いしようかしら……」
前やったのは王都にいた時だったから、3-4ヶ月前かな?
充分美人さんだと思うんだけどね。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚