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さて、玄関ホールでの話を終えると、俺は奥にあるリックの私室に、案内を断って一人で向かったんだが、その途中にある会議室の中から、リックの声と気配を捉えた。
他の職員らしき気配もあるし、自室じゃなくてこちらで会議でもしているんだろう。
ってことで、その会議室に「入るよー」と告げてから中に入ると、リックや一番隊の文官たちが、大量の資料が積まれた机を囲んでいた。
「……セラ副長か。ホールで随分と騒いでいたようだが、私に何か用か?」
「ここまで聞こえてたんだ?」
そこまで大きな声で話していたつもりはないんだけどな……と、困惑している俺に、リックは呆れたような顔で溜め息を吐きながら説明を始めた。
「本部内で大声が響くことはない……とは言えないが、セラ副長のような若い娘の高い声の持ち主が、大声で会話をすることはまず無いからな。それに、その声はたとえ大声ではなかったとしても、よく通る」
一応女性の騎士団団員もいないことはないが、彼女たちは基本的に上の屋敷で働いているし、たまにこちらに下りて来ることがあっても、騒ぎ立てるようなことはしないだろう。
肩身が狭い……とは言わないが、彼女たちも普段から居つかない場所なのに、大声を出すようなことはしないだろう。
言われてみればもっともだよな……と納得していると、リックは「それで?」と睨みながら話を続けてきた。
「今日のセラ副長の任務はもう終了しただろう? 団長も領都に戻って来たし、屋敷で何かを聞いたとしても、君が今日何かを任されるようなことはないはずだ」
まぁ……街の住民はともかく、商業ギルドの連中には三番隊の話が伝わっているんだし、それならリックにだって伝わっているよな。
騎士団内で話が周知されていないのは、まだ本決定じゃないから……とかかな?
それか、そういうのは騎士団団長であるオーギュストの役目だとでも思っているとか……か。
ともあれ、今日は朝から貴族街や領都内が騒がしくなっていることの原因が、三番隊に関してだってことはわかっているんだろう。
……ちょっと機嫌が悪そうなのはそれが原因かな?
まぁいいや。
俺は小さく咳ばらいをすると、不機嫌そうに話を待つリックを見た。
「貴族街の入り口のところで、馬車が何台か詰まっていたんだよね。中に入るためのチェックで手間取っているんだと思うけど、まだまだ街からコッチに来る馬車は増えそうなんだ。このままだと、事故が起きてもおかしくないよ」
それを聞いたリックは、大きく「はぁ……」と溜め息を吐いた。
「外の人間の手によるものだとはいえ、先日の件もある。貴族街へ入るチェックを緩めるようなことは出来ない」
「うん。それはわかってるよ。ついでに、一番隊から応援を出そうにも、人手が足りてないんでしょう? それなら二番隊を使っていいよ。皆暇してたから」
二番隊の隊長のアレクと副官のジグハルトは北の拠点に行っていて不在だし、副長の俺も昼過ぎまで街を離れていた。
そして、俺の補佐であるテレサは朝から冒険者ギルドに詰めていて、街の様子を確認できない状況だ。
二番隊が動ける状況ではなかったし、それなら俺たちが不在の間、騎士団全体を任されたリックが指示を出してもよかったんだろうが、色々な問題が表に出たのは、多分昼を回ってからだ。
その頃には俺もオーギュストも領都に戻って来ていて、彼が勝手に指示を出しづらい状況になっていた……ってところかな?
現場から要請があればまた別だったのかもしれないけれど、まぁ……難しいよな。
「一応、ホールで待機中の兵たちには、外の状況とか簡単には伝えているから、指示を出したらすぐに動けるよ。大勢は無理でも、一番隊の兵も一人か二人くらいなら出せるでしょう?」
二番隊の兵だと、入場のチェックとか気を使う作業の手伝いはちょっと不安だけれど、一番隊の兵に指揮役として参加してもらえば上手く動けるはずだ。
俺の提案に、リックは面白くなさそうな表情を浮かべつつも、仕方が無いといった様子で「わかった」と頷くと、命令書を書き始めた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




