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俺は今ミネアさんの部屋に向かっている最中だ。
俺1人で行くのなら数秒で済むが、案内が付いているからそうは行かない。
まして、廊下をバタバタ走る訳にもいかないからね……。
「ねぇ」
部屋に着くまでの間、少し探っておこう。
この人はミネアさん付きだからそこまで詳しくはないかも知れないが、奥さん同士仲は悪くないそうだし何か知っているかもしれない。
「何?」
「フローラ様ってどんな人か知ってる?オレ挨拶すらまともにした事無いんだよね」
「んー……控えめな方かしらね。確か大奥様のご実家がある領地の領主一族のお嬢様で、その縁で大奥様が話を纏めたとは聞いたけれど。私もまだここで働いて5年ちょっとなの。あまり詳しい事は知らないわ。ごめんなさいね?」
「いえいえ。今ので十分です」
具体的な情報は無かったが、オリアナさん経由だっていうならミネアさんとも仲が良さそうだったし、大丈夫だろう。
「ねえ」
「ん?」
「ちょっと耳に挟んだんだけれど、セラちゃんの加護で美人になるんでしょう?」
「美人になるかはわからないけれど、髪や肌は良くなるよ。オレがこっちにいる間に皆にもやったげるね」
「本当⁉楽しみにしとくわ!」
髪を見せびらかしながらそう言うと、嬉しそうに答えた。
……ここ何人位メイドさんいたかな?
◇
「わざわざごめんなさいね?セラさん」
「いえいえ」
ミネアさんの部屋はセリアーナの部屋と似ている。
同じくらいの部屋で隣室へのドアがあるところも同じか。
本棚の代わりに絵や花が飾ってあるのが違いかな?
そこの応接スペースにフローラと彼女の従者らしき女性が座っている。
そして、従者が俺を睨んでいる。
ジーナといい何でこう迫力ある人が揃ってんだろうか?
意識せずとも彼女達の方から遠ざかるように【浮き玉】が動いて行く。
「気にしなくていいわ。その娘はいつもそうだから。フローラさん、セラさんよ」
「初めまして、セラさん。私の為にわざわざありがとうございます」
30歳かそれ位だったかな?
腰まである赤みがかった長い茶髪で、伏し目がちで俺に対しても丁寧な言葉遣い。
控えめって言うよりは儚げって感じだろうか?
いつもニコニコしているミネアさんとは対照的だな。
「セラです。初めまして!」
2人を見るが険悪な空気は無いし、昼ドラ的な関係じゃなさそうだ。
これなら気楽に行ける。
「挨拶も済んだし、始めましょうか。あまり時間は無いのでしょう?」
フローラを見ながら隣室へ繋がるドアを指すミネアさん。
「呼ばれたから来たけれど、予定があるのなら他の日でも構いませんよ?」
「違うの。今は娘が勉強の時間で離れているから、その間に済ませたいの」
「あの娘がセラさんを見ると、欲しがりそうだものね」
弁解するフローラを揶揄うミネアさん。
なるほど……ルシアナだったっけ?
下の娘はちょっと我儘さんなのかもしれんね。
まぁ、周りは大人ばかりだし年が近いのがいないからな……。
とは言え。
「んじゃ、さっさとしましょう!」
お子様の相手は俺も苦手だ。
◇
ミネアさんの部屋は応接室と寝室の2部屋だった。
セリアーナの方が1部屋多い!
ちょっと意外だ。
「……大丈夫です?」
さて、その寝室のベッドの上でフローラの施療を行うのだが……。
「ええ、大丈夫ですよ。このままでお願いします」
ジグハルトをやった時と同じスタイルだ。
上を脱いだフローラの胸に座り、足を下半身の方へ伸ばす。
そして、後ろ手に顔を押さえている。
これなら広範囲を一気にやれるけれど、重く無いんだろうか?
貴族云々抜きでも女性にはきつそうだけれど……。
「普段からフローラさんはルシアナさんを抱き上げたりするし、それに私達もセリアーナさん程では無いけれど、少しは体を鍛えているから大丈夫よ」
「セラさん、娘より重たくありませんね。好き嫌いはいけませんよ?」
「あ……はい」
なんか的外れな説教を受けてしまった。
お貴族様的には痩せているっていうのは=好き嫌いをしているって見えるのかもしれないな。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚