153
ガンガンとアレクの盾をオークが打ち付ける音がダンジョンに響いている。
いつもスルーするか、倒すにしても速攻で倒していたが、こうして見るとオークも中々強いと思う。
力=パワー的な……。
あんなのが腕ブンブン振り回しながら不意を突いてきたら、そりゃ死ぬわ。
ただ、当たらなければその力も意味が無い。
今回は4体パーティーだったが、2体をアレクが引き受け、1体はエレナが牽制。
残りの1体は何故か先頭を走っていたセリアーナが出合い頭で突き殺している。
そして1体目を倒した後一旦最後尾に下がっていたが、再び動き出し軽い助走から飛び上がり、エレナが相手をしていた1体の核を貫いた。
核のある頭部が高い所にあるだけに、足を潰してから倒すのが基本らしいが、お構いなしだ。
「崩します!止めをっ」
セリアーナが2体目を倒した事がわかったアレクが戦闘を終わらせにかかった。
相手の攻撃に対してカウンターで盾を強く当て、体勢を崩す。
そしてもう1体との間に入り込み、2体を分断した。
「ふっ!」
それに合わせて距離を詰めたセリアーナが素早く止めを刺し、更にもう1体も難なく倒した。
今ので5パーティー目だが、どれも同じ様な手順で圧倒している。
とはいえ、流石に移動続きの戦い続きだったから息が切れたのか、足が止まっている。
「休憩するー?」
「そうね……周囲の警戒をお願い」
上から声をかけるとそう返って来た。
「はいよー」
壁側に移動した3人を中心に周囲を半円を描くように移動し、辺りの警戒をする。
が、今の所何もいないな。
少し離れた所で狩りをしているパーティーもいるし、今この辺りは安全そうだ。
しかし……そのパーティーの狩りと先程までの狩りを比べると大分違うな。
単純に3人が強いだけってのもあるかもしれないが、なんだろう……やっぱ盾役が安定しているからだろうか?
複数を相手取っても完璧に場をコントロールしている。
……残念ながら俺には全く参考にはならないが。
体格がなー……違い過ぎる。
真似しても死んでしまう。
真似をするなら、セリアーナのほうか。
ちょっとこのお嬢様強すぎないか?
何だかんだで俺はダンジョンを通過する時、天井付近を移動しているから他の冒険者の戦闘を目にする事が多い。
もっと下の階層を目指すような者達だと違うのかもしれないが、この階層をメインに戦う彼等の戦い方はひたすら力押しだった。
野趣あふれるというか、アレはアレで、いいものだ。
一方セリアーナの戦い方は洗練されているというか、とにかく無駄を省いていた。
俺も結構上手く戦えていると自分では思っていたが……ちょっとバタバタしている気がする。
まぁ、1人で戦っている事や、腕や武器の長さが違うから仕方が無い部分もあるかもしれないが、それでも随分参考になった。
しかし俺何もしてないな。
俺の役目は周囲の警戒だが、索敵範囲はセリアーナの方が俺より圧倒的に広い。
背後に魔物が現れた事もあったが、俺より先に察知していた。
強いてやった事を挙げるなら、すれ違う冒険者達に愛想を振りまいた位か?
余計な揉め事を避けるために、それはそれで重要な役割だ。
特に今日は領主の娘って言う大駒と一緒だ。
何かあっても問答無用で相手を引かせることが出来るだけに、揉めたりそのきっかけすら作る訳にはいかない。
愛嬌は大事だ。
うん、とても大事。
……ポーズでもつけた方が良かったかな?
「おや?」
下の3人は、俺が警戒ついでにポージングについて悩んでいる間に息を整えた様だ。
壁から離れ、軽く体をほぐしている。
タイマーを確認するともうすぐ1時間。
既に1度鳴っているから、ダンジョンに潜り始めてもう2時間か。
軽い運動というには十分過ぎる位だ。
頃合いかな?
「そろそろ帰還しましょうか。セラ、来てくれ」
それじゃー【祈り】を更新して、ダンジョン出口を目指してもらいますかね!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・34枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




