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セリアーナの部屋に運び込まれた、アレクがルトルから運んできた荷物。
山になっている。
アレだな。
今まで軽んじていた領主の娘が、自分達がど真ん中に組み込まれる新しい領地の領主夫人としてやって来るからビビったんだろう。
後数ヶ月でここを発つのに、こんな贈ってきてどうするんだろうと思うが、まぁ、使用人に下げ渡したりとかで上手くやるらしい。
「ご苦労だったわね」
荷物を全部運び入れ、使用人達が荷物の開封作業をしている間、セリアーナがアレクを労った。
「いえ。楽なもんでしたよ。冒険者も現地組、新加入組どちらも士気は高いし、殿下も上手く統率をとれていました。街の人間もあれなら逆らおうとはしないでしょう」
肩を竦めながら軽い調子でルトルの様子を語るアレク。
育った割にはあの街の事あまり知らないが、王や領主に従順って印象は無かった。
なんと言っても俺の弄る前の名前はエリーシャだ。
他にも何人かいたし、リーゼルとかもいた。
当時は特に意識していなかったが、よくよく考えると孤児に付ける名前じゃ無いよな……。
王族の名前だぞ?
でも様子を聞く感じ、縁遠すぎて他人事って感覚だったのかもしれない。
決して良いことでは無いんだろうけれど、それだけ国や領地と関りが薄かった証左だ。
だからこそ、教会が勢力を持っていたんだろうが……街の人はいきなりリーゼルがやって来て驚いただろうな。
さらにエレナも交じって3人で話しているが、俺には関係の無さそうな話だし……俺はあの山が気になる。
手伝おうかな?
「ああ、そうだ」
アレクは何かを思い出したのか開封作業をしている方へ近づいて行き、ボストンバックくらいの大きさの袋を手に取り、それを俺の方に持って来た。
「お前にだ」
何だろうと思い、受け取った。
大きさの割にそれほど重くない。
なんじゃ?
「……毛皮?」
中身を取り出すと、1人用の布団サイズの茶色い何かの毛皮の様な物だった。
「ジグさんとフィオーラさんがお前用に作らせたものだ。素材は天狼だぞ」
俺へのプレゼントか。
「てんろー……何だっけ?聞き覚えはある様な……?」
「あら、凄いじゃない」
セリアーナが少し驚いている。
そんなレベルの物なの……。
「あっ⁉」
広げて触っていると、その感触からピンときた。
「これ、王都でオリアナさんが使っていた無茶苦茶高いやつ!」
彼女のベッドで休ませてもらった事があるが、保温性保冷性どちらも高く、夏でも冬でも快適に眠る事が出来る超高級寝具だ。
「大奥様が使っているかはわからないが、その高いやつだな。そちらの青い箱にはお嬢様の分が入っていますよ。サイズはもっと大きいですがね」
セリアーナの分もあるようだ。
そりゃそうか。
俺だけもらうにはちょっと物が良すぎる。
魔王災の影響を受けた魔物や獣は、通常よりも強力になる。
そんな中で、複数の魔王種の影響を受ける事で巨大化したりそもそもの性質が変わったりする事もある。
天狼はその一種で、非常に強力な獣だ。
そんな地獄の様な環境は魔境にしか存在せず、したがって非常に高価になる。
そして、寝具にするには1体分では賄う事が出来ず複数必要になり、また強力なだけに綺麗に倒すことも難しく、どうしても安定して用意する事は出来ない。
その為、権力があろうと金があろうと待たされることになる。
これを手に入れたら、それだけでどんなパーティーでもちょっとした話の中心になれるって代物だ。
小ネタとして聞いたのだが、相場をはるかに上回る金貨を積めば手に入れられるそうだが、それをやってしまうと物の価値がわからない人間として、商人の間で笑いものにされてしまうそうだ。
成り上がり者が陥りやすい落とし穴らしく、稀によくある事らしい。
そしてそれが周りに広まり、貴族、平民問わず馬鹿にされると……何という罠。
「うはー……」
包まっているともう眠気が……。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・34枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚