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ダンジョン上層の最奥をふよふよ進む俺。
先日の会議を経て、個人的に頼まれた事があった。
例の事件の概要をある程度周知させるまで、浅瀬と上層で危険な状況に遭っている冒険者を察知する事が出来たら、救援に向かって欲しいと。
魔物を回避し壁や障害も関係無く高速で移動でき、上層程度の魔物なら一蹴できる俺はその役割は打ってつけらしい。
グチャっといってしまったのを見ているし、朝の1時間だけならって事で引き受け、数日間だがダンジョンを漂っていた。
流石に浅瀬で危機に陥ることは無いだろうと思い、上層を中心に移動していたが、会う人会う人既に知っている様で、事件の詳細を聞かれた。
命がかかわる事だけに皆しっかり情報を集めている辺り、半壊パーティーの油断が際立ってしまう。
彼等、どのみち全滅していたんじゃ無いだろうか……?
結局危機に陥る者もおらず、ギルド側も充分だろうと判断し、お役御免となった。
と、いう訳で今日はオーガさんに再び挑戦する。
この数日何もただクラゲみたく漂っていた訳じゃない。
攻略法を練っていたのだ。
今日以降、この階層のオーガは俺の獲物だ!
◇
中層に踏み込み、通路を抜け広間入り口前に陣取る投石組に接近し、一蹴した。
ここはもういつも通りというか、俺にはこれ以外の方法は無い。
問題はここから。
今まで取った方法は、上昇し投石組を集団から引き離してから各個撃破。
もしくは、そのまま集団を端から狙っていくかだ。
安全策で言うなら後者を取るべきだが、今回は投石組を先に倒す前者を選んだ。
これだと、オーガ達は陣形を敷いて来るがそれが狙いだ。
投石組を相手する時に背中に背負っていた傘を手にし、下を見下ろす。
ボスが中央に、その周囲にチーフが3体、通常個体が左右に5体ずつ。
陣形は例によって竜翼陣だ。
「ふっふっふ……!」
何度かの戦闘でわかった事がある。
オーガは臭いや音、魔力を感じる事が出来るが、やはり一番頼りにしているのは目だ。
なら、それを潰そう。
降下しながら一番端に狙いを付けて加速する。
それに合わせてオーガ達は俺を包囲するように動く。
前はこの状況を打破する方法が思いつかずに撤退を選んだが、今日は違うぞ!
完全に包囲される前に端の1体の首を刎ね、手が届かない高さまで上昇し包囲されたことを確認した。
ボスも含めて、俺に視線が集まっている。
「はっ!」
気合を入れ【竜の肺】を発動した。
これはあくまで補助で魔法の威力が上がる事は無いが、これが重要だ。
これで溜めの時間が減らせる。
アカメの目と【妖精の瞳】の発動を止め、傘を開いて準備完了だ。
「ふらっしゅ!」
開いた傘の石突の先から強烈な光が一瞬放たれた。
と同時に、オーガ達の苦悶の声が響く。
俺の傘は、魔鋼と魔木と言った魔法の威力向上効果のある素材、それも純度100パーセントで出来ている。
ジグハルトの閃光とまではいかないが、ここまでやれば俺の魔法でも目潰し程度の効果は発揮できる。
そして、俺自身は厚手の布で出来た傘によって守られている。
傘を閉じ下を見ると、顔を押さえ呻いている。
完璧じゃないか!
「ふっ!はっ‼」
一呼吸で2体倒し、一旦上に逃れる。
ボスを狙うか迷ったが、この狩り方はある程度規律を保ってもらう必要がある。
もう少し減らしてからだな。
「おわっと……」
更に2体を倒したところで、視界が戻ったらしく襲い掛かる素振りを見せたが、もう上にいる。
そして……。
「ふらっしゅ!」
また目潰しだ!
これを三度繰り返し、3体2体3体と倒し最後にボスが残った。
他の個体よりも一回り大きく、オークと遜色無い巨体だ。
かと言って鈍いわけでも無く、機敏で用兵術を考えると頭も悪くないし機転もきく。
すぐ上に逃れる俺に対抗しようと投石も行っていたが、1体だけじゃ脅威にはならない。
「ふらっしゅ!」
魔力を察知する能力も悪くないが、発射速度を重視した装備で固めた俺では相手が悪かった。
5度目の目潰しが見事決まり、腕を振り回し対抗としようとするボスの裏に回り込み、【緋蜂の針】で蹴りを放ち体勢を崩し、止めは【影の剣】だ。
「わっはっはっは!」
この広間にいるのは俺一人。
核を狙う余裕が無く、首を刎ねただけだから死体が残っていて少々絵面は悪いかも知れないが、勝利の風景だ!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・4枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・32枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚