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こちらにやって来たカーンは、くたびれたような声で話し始めた。
「商業ギルドお抱えの冒険者を何組か回してもらうことになった。先日の北の森の件も知っているし、場合によっては雨季が明けた後も街道が利用出来なくなる可能性もあるってことで納得してもらったが……」
「ああ、わかっているさ。適当に一の森の獲物を回してやればいいんだろう? まあ、囲っている冒険者を借りるんだ。それくらいは構わねぇよ」
「そう言ってもらえたら助かる。いくら領内での問題だとはいえ、あまり商業ギルドに借りを作るのは上手くないからな。ウチの責任内で解消出来るんならそれが一番だ」
「……どう話が転んでも、どっちも上の二人の派閥だろう? お前が気にすることじゃないだろう」
ジグハルトが笑いながら言い放った言葉に、カーンは表情を緩めた。
商業ギルドが抱え込んでいる冒険者は、ちょっと扱いが難しいからな。
一応冒険者ギルドの管轄ではあるんだが、それでも商人たちが個別に契約を結んでいる場合が多いし、そもそもリアーナの冒険者じゃない場合もある。
そういう意味では、あまり領地にとって重要な仕事を振るのは少々不安ではあるんだが……まぁ、流石に商業ギルドの幹部格の商人なら、リアーナで活動している腕がいい連中を押さえているし、その辺の不安は無いだろう。
んで、商業ギルドはリーゼルの、冒険者ギルドはセリアーナの派閥ってことになっているし、領内の治安は騎士団の問題でもある。
カーンも色々問題にならないように考えているが、どのみち領主夫妻の管轄になるんだ。
もう少し肩の力を抜いてもいいだろうな。
「よし……なら、俺はもうここでの話し合いに残る必要は無いだろう? 準備を済ませたらすぐに発つ」
ジグハルトはそう言って席を立つと、俺の頭越しにテレサを見た。
「拠点に回す人員の選別と任務の説明はアンタに任せて構わないか?」
「ええ。毎日伝令を送るわけですし、先遣部隊も残っていますから、そこまで細かく指示を出す必要はありませんね?」
「ああ。残っている兵も冒険者も、どちらもリアーナで顔が利く連中だ。上手く仕事を割り振れるだろう」
テレサの「わかりました」という言葉に頷くと、今度は視線を下げて俺を見る。
「お前も明日来るんだよな? いつも何時頃に北の拠点に到着しているんだ?」
「うん? 大体……10時ちょっと過ぎくらいかな? 誰かと一緒だとかだったら速度は落ちるけど……明日は一人で向かうからね」
途中の街道や森の様子を確認するために、速度は多少落とすが、それでもそうそう時間はかからないで到着出来るはずだ。
「俺たちはお前を待たずに先に川の手前まで行っておくから、昼前には合流してくれ」
ジグハルトの口振りだと、小休止を挟んでから一気に突っ込むつもりなんだろうな。
ジグハルトも大分本気っぽいな。
「む? ……了解」
「よし。後は任せた」
それだけ言うと、ジグハルトは足早に会議室を出て行った。
「……後は任せただって」
ジグハルトが出て行ったドアを見ながら俺がそう呟くと、テレサが「仕方がないですね」と立ち上がる。
「これ以上は時間をかけても仕方がありません。ジグハルト殿の穴埋め要員への指示書を作っておきましょう。カーン支部長」
「ああ。今呼びに行かせているから、すぐにやって来るはずだ」
テレサは「結構」と答えると、部屋の向かい側にいる職員たちの元に歩いて行った。
「支部長。これ以上何か大きな話ってあるかな?」
「あ? いや、もう無いだろう。……ああ、屋敷への報告か。それなら後で俺の方から持って行っておくから、お前さんに伝令を任せることはないな。話はそう長引きはしないだろうが……戻っても構わないぞ」
「そうだね……」
とりあえず、街の地下がバタバタしていた理由はわかった。
ジグハルトが北の拠点に行くってこと以外目ぼしい話はないし、それだけセリアーナに伝えたら十分だろう。
俺も明日は忙しくなるかもしれないし、今日のうちにしっかり体を休めておかないとな!
「それじゃー、オレは戻らせてもらうよ」
そう伝えると、俺はドアに向かって【浮き玉】を移動させた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




