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さてどうしたものか。
倒すだけなら簡単だけれど、問題は後ろにいる冒険者。
1人は倒れ、1人は壁にもたれ今にも倒れそうだ。
ちょっと小突かれただけでも死にそうだし、下手に刺激してオークが暴れるような事態は避けたい。
さらに、もう1体も完全に起き上がり、こちらに近づいてきている。
止まらず一気にやるべきだったかな……?
「お?」
どちらから倒そうかと思案していたが、無傷の1体が何かに気づいたのか俺がやって来た方向を睨んでいる。
流石に俺は目を離すような真似はしないが、程なく聞こえてきた足音で一緒に来ていた冒険者達が追い付いてきたことが分かった。
「離れろっ!」
その指示に従い距離を取ると、すぐさま矢に槍、斧がオーク目がけて飛んできた。
飛んできた方向を見ると、冒険者達が走りながら投げたようだ。
剣を抜き戦闘態勢に入っている。
「ぐっ⁉」
何か流れ弾に被弾し、呻き声をあげているのがいるが、死ぬよりはいいはずだ。
これなら任せていいか。
俺は周囲の警戒に当たろう。
「うーん……おや?」
丁度下の戦闘が終えた頃、奥からこちらに向かって来ているパーティーが見えた。
3人組で、半壊パーティーや俺が救援に声をかけたパーティーよりも1人1人力が上だ。
「こんにちはー」
両手を上げ戦意無しのポーズをしながら挨拶をする。
「おう!悲鳴が聞こえたんでやって来たんだが……必要は無かったか?」
彼等も救援に来たらしい。
もう戦闘は終わっているが……。
「待ってくれ!できればあんた等の手も借りたい」
「どうした?」
「死体を持って帰るのに俺達だけじゃ手が足りない。あんた等も頼む」
死体が2つに重傷者2人で、そして彼等は5人。
俺は戦力外だ。
街中ならともかく、ダンジョンから帰還するのにそれでは厳しいね。
「ああ……そりゃあ仕方ねぇな……」
それを聞き、ついでに俺の方を見て納得したのか頷いた。
この分だと同行してくれそうだ。
◇
帰還自体はスムーズに行った。
強いて言うならややグロ目の死体に俺が吐きかけたくらいか。
普通の死体ならいいんだけどね……。
潰されているのはちょっと……。
こんな状態でもダンジョンから持って帰らないといけないんだから、冒険者は大変だ。
それはともかく、無事帰還したのだが、受付で呼び出しを食らった。
別に説教というわけじゃない。
状況の説明を求められて、だ。
だが問題がある。
門限だ。
ただでさえ、20分位待たされているんだ。
「あのですね?協力するのはいいんですけど、その前にお嬢様に報告したいんですよ……」
「……あ?」
話を聞きに来た冒険者ギルドの偉い人は怪訝な顔をしている。
「オレ、探索時間は1時間って決められていて、余り遅れるようだと多分ここに屋敷の人間が来ると思います」
「ガキかてめぇは……って言おうと思ったが、ガキだな。そういや」
納得したのかセルフ突っ込みしている。
「あー……悪いがこれは決まりなんだ。ダンジョンでの死者がどういった事を引き起こすかは知っているだろう?当事者はもちろん、救援に当たった冒険者も報告書を仕上げるまでは外に出すわけにゃ行かねぇんだ。お嬢様って事はセリアーナ様でいいのか?事情を書いた手紙をすぐ出すから、それでいいか?」
「うん。それでお願いします」
「ちょっと待ってな……。よし。これにサインしてくれ」
渡された手紙に、俺のサインも入れる。
中身をちらっと見たが、死体の回収を行った為事情聴取で引き留める、とまんまな内容だった。
「おい!これを領主様の屋敷に急ぎで頼む。ま、大まかな事情は生き残った奴から聞いているがな」
サインを入れ返した手紙に封をし、別の職員に渡しながら話を始めた。
「あいつらは何でも拠点を定めず各村を移動しながら防衛や採取の依頼を受けていたらしい。開拓に参加しようと領都にやって来たが、ダンジョンで聖貨を得る事が出来たみたいでな。しばらく籠る事にしたそうだが……最近冒険者達が移動を開始しただろう?今まではそいつらと適当に連携を取りながらやっていたそうだが、今日は自パーティーのみでぶつかったらしい。結局力が足りずに壊滅だ……」
天井を仰ぎ見、額に手を当てている。
探索届を出す際に簡単にだがギルドが審査をするし、責任を感じているのかもしれないが……ドンマイ?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・4枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・32枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚