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「よいしょっ!」
俺は適当な木を見つけると、【ダンレムの糸】を発動した。
今度は先程と違って、ちゃんと木の右側にだ。
尻尾も発動して木を巻き込みながら弓に巻き付けるが、背中を向けて構えるよりも、やはりしっかりと前向きで構える方がしっくりくる。
「よしよし……。えーと、さっきカエルもどきが出たのは……あの辺だよね?」
弦を引きながら、俺は水溜まりに視線を向ける。
俺が先程襲われたのは水溜まりの中央付近で、カエルもどきの胴体は、その近くに沈んでいるはずだ。
地面から1メートル程度しか高度を取っていない今だと、全体を見通すのは難しく、どこが中央かはわからないんだが、水面に飛び出している木が丁度いい目印になっている。
俺はその木を目印に狙いを付けると。
「ほっ!」
掛け声とともに、目印目がけて矢を放った。
「ほっ! ぬぬぬぬっ!? ふぬっ!!」
矢の威力に押されて暴れる弓を、尻尾と両腕、それに【猿の腕】を使って何とかコントロールしていく。
「ぐぬぬぬぬっ……なんとか抑えられてるかなっ!?」
カエルもどきは今、頭部と胴体の二つに分かれている。
いくらほとんど水の流れは無いとはいえ、胴体はまだしも、頭部はその流れに乗ってしまうだろうし、どこかに行ってしまう前に倒さないとな。
ピンポイントに狙うよりは適当にバラけた方が、広範囲を潰せる分撃ち漏らす確率も減るだろうし、とりあえず前を向き続けるようにだけ気を付けながら、水溜まりの中央付近を狙い続けていた。
「…………よし」
何がよしかは自分でもよくわからないが、矢の魔力が尽きたところで、俺は弓を解除すると、霧に呑まれる前に急ぎ後退した。
先程と違って、矢が地面を削らずにモロに水面に直撃したから、霧の勢いは今回の方がずっと強い。
「コレが晴れるのを待つのはちょっと時間がかかりすぎるかな? 水溜まりを一回りして……それで……ん? アレは……?」
聖貨は得られなかったが、今の一撃で先程のカエルもどきは多分仕留められただろうし、これ以上ここに留まり続けても切りがない……ってことで、上空から簡単に一回りして、領都に戻ろうと考えていたんだが、視界の端に何やら霧の向こうに消えていく赤と緑の光る点が……。
「今の……魔物か? ……ええぃっ!」
一瞬躊躇いはしたが、俺はすぐに霧の中に飛び込んで行った。
◇
「水の中にはいないか……。そりゃそうだよね」
水面近くを高速で飛び回ったが、水中に生物の気配は無い。
さっきから何回も確認していたことだし、今更見落とすようなことはない。
見落とすようなことはしないはずだが……そうなるとさっきのアレはなんだ?
「水溜まりの外に逃げていったのかな……?」
穴に潜ってジッとされたら流石に気付けないが、そもそも動いていたから気付けたわけだしな。
それなら、この水溜まりから外に逃げた何かって考えるのが妥当かな?
「あの4体のうちの生き残りか、実は全く新しいのが今まで隠れていた……とか。後者の方がありそうかな? 今まで潜んでいたけど、さっきの水中への一撃で危機を感じて逃げ出したか……」
地面を削りながら水溜まりの端に着弾した最初の一発目と違って、さっきのは水溜まりの中央に直接撃ち込んだわけだし、水中への影響は段違いだろう。
逃げ出すこと自体は別に理解出来なくもないが……。
「今から追えるかな? ……それに、新しく1体出てきたってことは、まだ他にもいるかもしれないよな」
俺は今の状況を確認するために、一旦霧を飛び出て森の上空に移動した。
霧の影響もあって、下の水溜まりの様子は肉眼ではまだ見ることは出来ない。
だが、【妖精の瞳】とヘビの目を使っても、何の生き物も発見出来ないし、とりあえず今はここを気にしても仕方がないだろう。
それより、逃げていった1体だ。
ちょっと面倒な魔物を森に放ってしまったかもしれない。
俺は地上の様子に目を配りながらどう対処するかを考え続けたが、俺自身で解決する手段は考え付かなかった。
だが、その代わりに、とりあえず今やっておいた方がいいであろうことは考え付いた。
「…………そうだね」
一言呟くと、【浮き玉】を南に向けて発進させた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




