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「やぁやぁ……お待たせ。頭は潰したし、魔力の繋がりも断ったし……。流石にここまでやったらもう動かないみたいだね」
俺は街道に転がる胴体を見下ろしながら言い放った。
相変わらずこの状態でもピクピクと動いてはいるが……さっきまでと大分様子が違う。
これは反射だよな?
それでも、慎重に尻尾でカエルもどきの胴体を押さえ付けると、右腕を振り下ろした。
「よい……しょっと!」
まずは胴体の真ん中あたりから大きく真っ二つにすると、さらに細かくスパスパと切り裂いていく。
「……うわぁ」
俺は普段ここまで魔物を細かく切り刻むようなことはないから、傷口から漏れ出る中身のグロさに呻き声を漏らした。
【風の衣】があるから、俺の鼻に臭いは届かないが……中々どうして。
これはどうやっても持って帰るのは無理だな。
カエルもどきの周囲のグロイ光景を見て、俺は大きく溜め息を吐いた。
調査隊の隊員たちを先に行かせて自分だけこの場に残ったのは、もちろん魔物の死体の処理をするって理由があったんだが、実はもう一つあったりもする。
このカエルもどきの死体を、どうにか持ち帰れないか試したかったんだ。
どうせ夜に領都に戻るんだし、【隠れ家】に突っ込んでおけば持って帰れるもんな。
ヌメヌメしているから、ちょっと工夫は必要だと思うが、まぁ……いらない布も木箱も中にたくさんあるし、やってやれないことはないと思っていたんだが……まさか、ここまでしぶとい生き物だとは思いもしなかった。
「参った参った……」と呟きながら右腕を動かしていたが、それを止めると、肉片となったカエルもどきを凝視する。
「うん……流石にもう体力も魔力も残ってないね。なんか……ここまで死体を刻むのはちと心が痛いけど、こうでもしないと不安だし、仕方がないか。さて……と、それじゃー片付けようかね」
完全に死体……どころか肉片になっているが、それでもちょっとコレを【隠れ家】に入れるのはごめんだ。
【隠れ家】を発動した場所から、俺が距離をとると、中の生き物は勝手に外に放り出されるし、仮にコイツが中で復活するようなことがあっても問題は無いんだが、気持ち悪い物は気持ち悪い。
それに、ここまでグチャグチャにしてしまったら、持ち帰りたいそもそもの目的の素材としての使い道も微妙だろうしな。
ってことで、もうコレはいいだろう。
元カエルもどきをそこに残して、俺は他の魔物の死体を集めに向かった。
◇
「よいしょ……っと。仕方が無いとはいえ、この距離を一体ずつ引っ張って来るのは流石に面倒だったね……」
小型の妖魔種とは言え、【祈り】が使えない今の俺が持ち上げられるサイズじゃないし、一体ずつ尻尾で引きずって運んで来た。
どうせ【浮き玉】に乗っかって【蛇の尾】で引っ張ってくるだけだし、疲れるようなことはないんだが、思ったよりも時間がかかってしまった。
いつも外で魔物を倒した時は、精々数メートル程度しか引きずらないからな。
そして、残りは狩場にいる巡回の兵だったり冒険者に任せていた。
いやぁ……肉体労働は大変だ。
雨季が明けたら、狩場で手伝ってもらう者たちにもっと感謝を伝えないといけないよな。
「まぁ……それはそれとして、死体を纏めたし、さっさと燃やしちゃおうかね」
俺はポーチから燃焼玉を取り出すと、死体の山から距離をとって、魔力を込めながら投げつけた。
小さい音が一瞬したかと思うと、雨に反応して燃焼玉が一気に炎を吹き上げて死体を燃やし始める。
「うん、よく燃えているけど、周りの茂みに燃え移るようなことは無さそうだね」
離れた位置から死体が燃えている様子を眺めているが、わざわざ街道の真ん中に集めた甲斐があったようだ。
雨が降っているし、そう簡単にこの時期の草に燃え移るようなことは無いだろうが、火力は結構あるからな。
油断は出来ない。
「……む?」
じっと見つめていると、初めは白い煙を上げていたんだが、何やら緑と紫が混じったような毒々しい色に変わってきた。
「カエルもどきのかな? 何か毒みたいな液を吐いてたし、燃やしたらこんなこともあるのかな……?」
周りに人がいなくてよかったな……。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・4枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




