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俺が馬車の外を飛んでいることを申し訳なく思っている1番隊の兵に、【風の衣】の便利さを説明すると、俺はさらに話を続けた。
「それに、オレはいつも宙を飛んでいるでしょう?」
「はい。……ああ、確かに足場の悪さも関係ありませんね」
彼は、俺の言葉を聞いて、何を言いたいのかわかったんだろう。
何度か大きく頷いた。
当たり前ではあるが、常に【浮き玉】に乗って飛んでいる俺には、足場がどうなっていようと関係が無い。
ただ、俺と普段から関わることが無い連中は、意外とそこを抜かして考えている場合が多かったりもする。
そもそも、雨の中女性が街の外を出歩くってことがまず無い世界だもんな。
仕方ない仕方ない。
「そうそう。オレにとっては、揺れる馬車に乗るよりも、こうやって外を飛んでいる方が快適なんだよ。索敵も馬車の車体を間に挟むより、直接見る方がずっと見やすいしね」
今はまだ森まで距離があるが、もう少ししたら森の外縁側に差し掛かる。
この辺にいた魔物は先日倒し切ったし、この辺で遭遇するようなことは無いだろうが、それでも気を抜いちゃいけない。
木が邪魔で魔物の存在に気付かなかった……なんてことが起きないように、索敵は馬車の中からじゃなくて外から行うべきだろう。
もしセリアーナが一緒だったら、彼女の加護で大体の魔物の位置を確かめて、そこから俺が詳しい情報を探るって方法も選べるが、このメンツならこの方法が正解だ。
「なるほど。呼び止めて申し訳ありません」
「いやいや、気にしないでよ。それに……いや、何でもない。それじゃー、オレは元の位置に戻るよ」
【風の衣】の範囲外になることを気を付けるように言うと、俺はその場を離れて、一行の中央に位置する馬車の上に移動した。
しかし……馬車の側面を変わらず走っている彼は、先程の俺の呟きが聞こえたのか聞き漏らしたのかはわからないが、聞き返してはこなかった。
「危ない危ない。余計なことを言いかけたね」
馬車のすぐ上空で周囲を探りながら、俺は小声で呟いた。
俺が馬車に乗らずに外を移動している理由は、もちろん、先程言ったことも含まれているんだが、もう一つ大きな理由があったりもする。
もし、このメンツで手に負えないような魔物が現れた時、確実に無傷で離脱をするためだ。
普通に考えると、多少なりとも壁に囲まれている馬車の中の方が安全だが、多少の威力の攻撃なら防いでくれる【風の衣】と、とりあえずどんな攻撃でも一発は防いでくれる【琥珀の盾】を持っていて、尚且つ自由に宙を高速で移動出来る俺にとっては、逆に足枷になってしまう。
俺にとって怖い攻撃ってのは、例えば、デカいヘビに巻き付かれたり、大型の妖魔種に掴まれるような、【風の衣】を破り拘束されることだ。
馬車に乗っていて、車体に取り付かれてしまうと、その怖い攻撃を食らってしまう可能性が外にいるよりずっと高くなるんだよな。
このメンツを進んで見捨てるような真似はしないが、それでも、いざって時はその選択が出来る余地は残しておかないといけない。
「……そうならないためにも、しっかりと索敵をしないとな!」
俺は気を取り直して、【猿の腕】を発動して馬車の屋根を掴んだ。
これで、移動は意識する必要が無い。
気合いを入れて【妖精の瞳】とヘビの目で周囲の索敵に取り掛かった。
◇
領都を出て、走り始めてから既に30分ほどが経った。
西に北の森、東に魔境の一の森が広がっているが、今のところ街道はもちろん、森の浅瀬にも魔物の姿は見えない。
通常なら、襲ってくるかは別にしても、街道を通る者を見るために数体は魔物が潜んでいるんだが……やはり、まだまだ魔物は戻って来ていないっぽいな。
「魔物の姿は無いね。この辺は安全みたいだよ」
俺は御者を務める兵に、周囲を索敵した結果を伝えると、ほっとしたような声が返って来た。
「ありがとうございます。助かります」
雨の中魔物がいるかもしれない場所を走らせるんだ。
いくら護衛付きとはいえ、緊張するのは仕方がないだろう。
「魔物が来たら、オレがすぐわかるからねー」
そう伝えると、再び索敵に集中した。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・4枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




