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「オーガが陣形を……?」
ジグハルトの施療中、ダンジョンでの出来事を報告してみた。
やはり陣形を敷くという情報は知らなかったらしい。
「そうそう。投石組と戦っている間ずっと観察していたと思ったら、倒し切ったところで、こう……こんな感じに並んでオレを待ち構えてたんだよね」
両手が使えない為、頭をΛの字に動かして何とか形を表した。
「その形は……竜翼陣か。こんな形だろう?」
アレクがその陣形を図に描いている。
「それそれ。竜翼陣ってこれだったんだね……」
歴史書とかに偶に出てきた単語だが、これの事だったのか。
「ああ。中心に最強の駒を置いて、そこへ周りから追い込む陣形だ」
鶴翼とは性質が違う気がするな……。
こっちは攻撃的な感じだ。
「少数の強敵を……っ⁉」
アレクの補足をしようとジグハルトが口を開いたが、ペチッと叩き黙らせた。
「はい。動かない」
お喋りじゃ無くて、ジグハルトの施療がメインだからな。
「あー……恩恵品や加護持ちを孤立させて、迎え撃つ時に使うんだ。中心はデカいのだったろう?」
アレクが続きを説明する。
「うん。ちょっと嫌な感じがしたから撤退したけど、それでよかったみたいだね」
「それで正解だ。しかし中層の魔物が使うか……」
アレクはそう呟き腕を組む。
「簡単な資料は私も目を通してあるけれど、普段は使わないの?」
考え込んだアレクをよそに、セリアーナがエレナに聞いている。
「はい。精々役割を分担する程度なのですが……、恐らくセラが特殊だったんでしょう」
「特殊?……まあ変な娘ではあるけれど……」
なんか失礼な事を言われている気がするな。
「通路を突破しその後は一気に接近し乱戦に持ち込む方法が中層の一般的な戦い方です。そして、申請する際に受付で最少は10人以上を提示されるので、人数差は生まれません」
「少数を相手に、より有利に戦う為ですものね」
「はい。そして、例えばジグハルト殿の様に単独で突破できる方だと、そもそも時間をかけずに一息で倒せるでしょうから……」
何やら言いよどむエレナ。
「そこまで強くないのに単独で、それも時間をかけて戦う様な真似をする者はいなかったって事ね」
「……」
否定はしないよ?
否定はしないけれどもね?
「想定外の魔物の動きを無傷で切り抜けたのだから、それで良しとしておきなさい。それにしても……私はダンジョンはほとんど利用しないけれど、外の魔物とはだいぶ毛色が違うわね……」
フィオーラ曰く、外の魔物はそこまで組織立って動くことは無いらしい。
もちろん大きい群れ等の、長生きしているボス格がいるようなら違うそうだが、精々4-5体らしい。
やっぱダンジョンは何か特殊なんだろう。
◇
「お?」
お喋りをしていると、タイマーのアラームが鳴った。
1時間。
喋ろうと思えば喋れるものだ。
「よいしょ、と。いいよジグさん」
乗っていたジグハルトから降り、終わったことを告げる。
お喋りしながらとは言え、しっかり手応えはあった。
「おう」
起き上がり顔をこちらに向ける。
……いい出来じゃないか。
「あら、素敵じゃない」
セリアーナも好印象の様だ。
「鏡はあるか?」
フィオーラが手渡す。
肝心のこの人がまだ何も言っていないが、顔を見るにご満悦の様だ。
「……ほう」
ジグハルトも鏡を見て、満更でもない様子。
色々な角度から見ている。
老けた印象は無かったとはいえ、いざこうやって見比べてみると大分違うのがわかる。
目尻や頬が少し下がり、皴なんかもだが、肌もかさついていた。
それが、肌には張りが戻り、目も比喩ではなく鋭さが戻っている。
「お腹もやったから、調子良くなっていると思うよ」
「そうか……大したもんだな」
鏡から目を離さないジグハルト。
数ミリ程度の長さだけれど、額に毛が生えているからね……。
「王都では試す機会は無かったけれど、しっかり効果があったわね」
王都にいた時、いけそうな気がするって話したことをセリアーナは覚えていたらしい。
結局王都では機会は無かったが、ここで来るとは思わなかったな。
「ほんとだね……」
「広めるとお前に見てもらいたがる殿方が増えると思うけれど、どう?」
「おっさんにモテてもね……来たら断ってよ」
「そう。まあ適当に処理しておくわ」
フフフ……この感じだと、こっちでもお小遣いには困らなそうだな!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・31枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




